新型コロナウイルス肺炎について その2

いつもブログをご覧いただき、ありがとうございます。昨年12月に発生した新型コロナウイルス肺炎が、日本をはじめとして全世界に拡大しています。今回もこの肺炎について取り上げたいと思います。1.現在の状況日本時間3月1日午後10時現在、WHOが発表した世界各国・地域での感染状況は、中国本土での感染者数が7万9,824人(死亡2,870人)、韓国3,736人(20)、イタリア1,128人(29)、イラン978人(54)、クルーズ船705人(6)、シンガポー...
いつもブログをご覧いただき、ありがとうございます。
昨年12月に発生した新型コロナウイルス肺炎が、日本をはじめとして全世界に拡大しています。今回もこの肺炎について取り上げたいと思います。

1.現在の状況
日本時間3月1日午後10時現在、WHOが発表した世界各国・地域での感染状況は、中国本土での感染者数が7万9,824人(死亡2,870人)、韓国3,736人(20)、イタリア1,128人(29)、イラン978人(54)、クルーズ船705人(6)、シンガポール106人、フランス100人(2)、香港96人(2)、アメリカ62人(1)、ドイツ57人、スペイン46人、クウェート45人、タイ42人(1)、台湾40人(1)、バーレーン38人、マレーシア25人、オーストラリア24人(1)、イギリス23人(1)、アラブ首長国連邦19人、ベトナム16人、カナダ14人、イラク・スウェーデンが各13人、スイス・マカオが各10人、レバノン7人、クロアチア・オランダ・ノルウェー・オマーンが各6人、オーストリア・イスラエル・ロシアが各5人、ギリシャ・メキシコ・パキスタンが各4人、フィリピンが3人(1)、フィンランド・インド・ルーマニアが各3人、デンマーク・ジョージアが各2人、エクアドル・アフガニスタン・アルジェリア・アゼルバイジャン・ベラルーシ・ベルギー・ブラジル・カンボジア・エジプト・エストニア・アイスランド・アイルランド・リトアニア・モナコ・ネパール・ニュージーランド・北マケドニア・ナイジェリア・カタール・スリランカが各1人と、感染者が合計8万7,506人、死者2,994人と南極以外の全大陸で感染者が出ています。特に韓国、イタリア、イランで患者数が激増しています。それ以外のヨーロッパ各国でも次第に患者が増加してきており、全世界(中国以外)では一日に700人を超える患者数の増加が起きています。

■コロナウイルス集計値
https://multimedia.scmp.com/widgets/china/wuhanvirus/#

これを受けて当初はパンデミックの可能性を否定していたWHOも、遂に新型コロナウイルス(COVID-19)の世界的流行(パンデミック)を認定しました。それ以前は感染状況を「高い」としていましたが、「非常に高い」という引き上げを行った理由として、欧米各国での感染拡大があり、事実上の非常事態として世界各国に対策の強化を促しています。
日本では3月1日現在、感染者が242人(チャーター帰国便、クルーズ船は含まず)、死者が5人となっており、特に北海道では70名を超える感染者が出ています。そして東京都26人、愛知県28人、神奈川県18人、和歌山県11人と続き、全国18都道府県で患者が出ています。ただし、これはPCR検査で陽性が確認された人数です。医師から検査要請が保健所に出されても拒否されるという事例が数多くあり、実際にはもっと多くの患者が存在している可能性がかなり高いです。
日本で最初に感染が確認されたのが、中国人団体ツアー客のバス運転手さんでした。そしてツアーガイドも感染と、感染元がはっきりしていました。また神奈川県のタクシー運転手さんは屋形船での新年会で感染。この屋形船も中国からの団体客が利用しており、船や従業員から新年会に出席した方々が感染。その方達から同僚が感染と、感染元を辿ることが出来ました。しかし、和歌山県の医師、その同僚や家族、入院患者などの感染経路は確認できましたが、最初の患者である医師がどこで感染したのかがわかりません。また愛知県でも1人から28人が次々と感染しましたが、その感染経路は確認されても、最初の感染者がどこで感染したかがわかっていません。そして29日には29人目の方が確認されましたが、この方と既に感染が確認された28人との接触は確認されておらず、感染ルートが不明になっています。
このように現在は感染爆発の直前ともいわれています。この2週間が感染の収束に向かうか爆発するかの分かれ目ということで、いきなり3月2日から全国の公立小・中・高校の休校要請が出されました。これを受けて、学校現場を始めとして各地では大混乱が起きています。来月予定されている裁判員裁判も、延期が決定しました。またディズニーランドやUSJなどの大型施設、スカイツリー、博物館や劇場などの各施設も3月中旬まで休業を打ち出しました。今後、更に様々な施設が営業時間の短縮や臨時休業を打ち出してくると思われます。

2.特徴について
この新型コロナウイルス肺炎は、当初の症状が風邪と変わらないため、症状がある程度進まないと確定診断が出来ません。ただ風邪と異なり鼻水が出ない場合もあるようです。クルーズ船の乗客の中には、全く症状がなくて検査したら陽性だったという人も多いようでした。
そして感染が広がる原因の一つが、無症状でも感染させる力があることです。体調不良を感じれば自分で気を付けることも出来ますが、何も症状がなければ通常の活動をしてしまいます。そして知らないうちにウイルスをまき散らす結果になってしまいます。
もう一つ怖いのが、肺炎がいきなり悪化することです。普通の風邪でも高齢者は肺炎になる場合がありますが、最初は片方の肺だけが炎症を起こします。もう片方は健全なので、この時点では呼吸は出来ますが、そのまま悪化していくと炎症が両肺になり、自発呼吸が困難になってしまいます。今回の新型肺炎は、いきなり両肺に炎症が発生するようで、当初、容体が安定していた方が急変してしまいます。この急変は発症してから2週目ぐらいに起きるようで、ここが回復に向かうか悪化するかの分かれ目のようです。
WHOによると、重症化率は全体の13.8%程度で、呼吸器不全や多臓器不全のような命に関わる重篤な症状の患者は、全体の6.1%だったとのことです。年代が高いほど重症化率は高くなり、80歳以上の感染者の致死率は21.9%となっていました。また、合併症状があると重症化率はもっと高くなる傾向が見られ、循環器の病気がある人は全体の13.2%、糖尿病が9.2%、高血圧が8.4%、慢性の呼吸器の病気が8.0%、がんが7.6%となっています。
反対に40代以下の若い人だと致死率は1%にもいきませんが、20代の方が容体急変を起こす事例も出ています。これはサイトカインストーム(免疫暴走)と呼ばれるもので、若い方は免疫力が強いため、自分の免疫が正常な細胞まで攻撃してしまい、多臓器不全を誘発することにより重篤化するものです。
一方、病状が回復して検査結果も陰性になり退院された方が、再度、陽性になるケースも14~17%の確率で出ています。肺の中で新型コロナウイルスが休眠状態になり、症状が最小限に抑えられて検査結果が陰性になりますが、再発後は症状がより重くなり、命の危険性が高まるようです。ほかにも新型コロナウイルスが治療後に薬物耐性を獲得しているという話もあり、楽観することは出来ないと思われます。

3.感染から自分を守るためには
ウイルスに感染しないためには、基本はうがい、マスク、手洗いになります。そしてバランスの良い食事、睡眠をとり、自己免疫力を高めておくことが大切です。
今回の新型ウイルスは、飛沫感染と接触感染によって感染します。WHOは新型コロナウイルスの予防にマスクはあまり効果がないとしていますが、マスクをすることにより、他者の咳やくしゃみによって生じる飛沫の吸い込みを防ぎます。飛沫感染は限定的とも言われますが、密閉された空間に感染した人と長時間いると感染リスクが高まります。そして最も感染のリスクが高いのは、ドアノブや手すり、トイレなどに付着していたウイルスに触れて、その手を目・鼻・口の粘膜に付着させることで感染してしまうことです。とにかく自分の顔に触らないようにしましょう。

■厚生労働省 新型コロナウイルスに関するQ&A (一般向け)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00001.html

■東北医科薬科大学病院感染制御部 感染予防ハンドブック (PDF)
http://www.hosp.tohoku-mpu.ac.jp/manager/wp-content/uploads/2020/02/新型コロナウイルス感染症_市民向けハンドブック_20200225.pdf

■農林水産省 緊急時に備えた家庭用食料品備蓄ガイド (PDF)
https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/anpo/pdf/gaido_160511_1.pdf

■農林水産省 新型インフルエンザに備えた家庭用食料品備蓄ガイド (PDF)
https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/anpo/pdf/gaido.pdf



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新型コロナウイルス肺炎について

いつもブログをご覧いただき、ありがとうございます。2020年は年が新しくなった途端に、1月3日には米軍によるイランのソレイマニ司令官の暗殺、8日にはそれに対するアメリカへの報復攻撃という、戦争へのきな臭い流れで始まりました。幸いにもイラン・アメリカ両国とも全面戦争は望んではおらず、米軍の実質的な被害もなかったため、報復の連鎖で戦争が拡大するという最悪な状況は当面は回避されたように見えます。しかし、イラン...
いつもブログをご覧いただき、ありがとうございます。
2020年は年が新しくなった途端に、1月3日には米軍によるイランのソレイマニ司令官の暗殺、8日にはそれに対するアメリカへの報復攻撃という、戦争へのきな臭い流れで始まりました。幸いにもイラン・アメリカ両国とも全面戦争は望んではおらず、米軍の実質的な被害もなかったため、報復の連鎖で戦争が拡大するという最悪な状況は当面は回避されたように見えます。しかし、イランの民間航空機が誤って撃墜され、180名近い人命が失われるという悲劇が起きてしまいました。
そして現在は中国・武漢から発生した新型肺炎が、世界中に影響を及ぼし始めています。今回はこの肺炎について取り上げたいと思います。

1. 現在までの流れ
1月30日現在、肺炎の死者は中国本土で170人を超えました。感染者は7700人以上、このうち重症者は1200人を超えています。感染の疑いがある人は9200人近く、感染者との濃厚接触が確認されて医学的な監察下にある人は6万人近くにのぼっています。新型肺炎は中国全土31省・自治区・管轄区に感染が拡大しています。中国本土では2002~2003年に流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)では5327人の感染者が出ましたが、今回の新型肺炎はこれを上回っています。
中国国外での感染者は、日本を含む世界の19の国と地域に拡大しています。国外の感染者は、これまでは中国からの観光客が滞在先の国で発症したり、中国へ出張した人が帰国後に発症した事例のみでした。しかし、1月28日には、中国の団体客を乗せていたバスの運転手やツアーガイドが発症するという、二次感染(ヒトヒト感染)が原因と考えられる事例が起きてしまいました。
この新型肺炎の患者が武漢市で初めて確認されたのは、昨年12月8日のようでした。その後も原因不明の肺炎の症例が増えているという中国メディアの報道が確認できます。これが新型コロナウイルスの肺炎かどうかは確認できませんが、少なくとも12月8日には「原因不明の肺炎」症例が確認されていました。
その後、ネット上では12月30日に「原因不明の肺炎に関する緊急通知」という武漢市衛生当局が出したとされる文書が出回ったとあり、更に各医療機関に宛てた「武漢市の海鮮市場で原因不明の肺炎患者が相次いでいるので、同様の患者数を報告してほしい」旨の緊急通知があったようです。この2日後の1月1日にウイルス発生源と指摘された海鮮市場の休業が発表されました。しかし最初の確認から閉鎖まで3週間近くかかってしまい、中国国内でも情報公開と対応の遅れが指摘されています。3月に開催される全人代の前に地方政府ごとの大会があり、その無事開催のために情報を隠匿していたようで、中央政府に対しては「原因不明の肺炎患者が発生したが、感染拡大は完全にコントロール出来ている」という嘘の報告がなされていたようです。
武漢市で発生している新型肺炎の原因が新型コロナウイルスによるものと中国メディアが報道したのが1月9日で、最初に確認された症例から1ヶ月が経過しています。ちょうど旧正月の国民大移動が始まった頃にあたります。習近平国家主席が初めて指示を出したのが1月20日。そして中国の専門家チームが「ヒトヒト感染」が起こっていることを明らかにしました。これを境に中国メディアが肺炎のニュースを大きく取り上げるようになり、市民の警戒レベルが一気に高まりました。23日には武漢の空港や駅が閉鎖され、27日には海外への団体旅行が禁止されました。
武漢をはじめとする13都市では移動制限が発令され、人の行き来が出来なくなっています。当初は通行可能だった大型幹線道路も、許可のある車しか通行できなくなっているようです。武漢市に隣接するエリアでは、道路に障害物を置き、武漢市民が自分達の地域に入らないようにという騒ぎも始まっています。しかし既に各地へ移動した人もかなりの数に上り、今後、新型肺炎を発症する人が爆発的に増加する可能性が高くなっています。
■厚生労働省 感染症情報
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164708_00001.html

2. どこから発生したか
今回の感染源は、最初に患者が発生した武漢市にある海鮮市場が発生源と言われています。しかしウイルス研究の専門家は、シーフード市場で最も感染性の高い疾患は、口から入るA型肝炎及び腸炎ビブリオの感染症で、一般的に肺炎ウイルスが水産物市場から出てくることを想像するのは難しいと述べています。
この海鮮市場では魚介類のほかにも実際には鳥獣や犬の肉の店があり、通りには動物の内臓などが散らばっており、衛生状態はかなり悪いようです。コロナウイルスは「人畜共通ウイルス」とされており、ヒトに感染する前に宿主となっていた動物とヒトとの接触から始まったとも思われています。
最近までの遺伝暗号の解析によると、この新型ウイルスは中国にいる2種類のコウモリが持つコロナウイルスと関連していることが判明しています。そのため当初はコウモリがウイルスの起源だと考えられましたが、更にウイルスのタンパク質コードの分析を進めたところ、今回の新型ウイルスに最も近いのは「ヘビ」だったそうです。武漢の市場では食用としてのヘビも販売されていたので、ここからヒトへ感染していった可能性も考えられています。
また武漢市には、SARSとエボラ出血熱を研究する武漢国立生物安全研究所が存在しています。2015年に建設されたこの研究所は、バイオセーフティレベル4の基準を満たすように設計された国内初の研究所で、最も危険な病原体を扱う研究所です。2017年には米国のバイオセーフティ専門家が、この施設からウイルスが漏洩する可能性を警告していました。米ワシントンタイム紙や英デイリーメール紙は、この研究所から何らかの細菌か生物兵器が漏れたと報道しています。約32km離れた場所に海鮮市場があり、この研究所から漏れたウイルスが突然変異を起こし、市場での動物と人間の接触を通じて感染したと考える科学者もいます。

3. ウイルスから身を守るには
今回の新型コロナウイルスは、発症していない人からも感染するケースが出ています。潜伏期間は1~14日と幅があり、症状がなければ職場などいろいろと行動範囲も広くなり、知らないうちにウイルスをばら撒いているかもしれません。
ウイルスに感染しないためには、基本的には季節性インフルエンザの予防と同様の方法しかありません。身の回りを清潔に保ち、十分な睡眠とバランスの取れた食事や基礎的な体力をつける、規則正しい生活を送ることが基本になります。そして外出時のマスク着用、なるべく人の集まる場所へは行かない、帰宅時のうがい、手洗いという基本的なものになります。特にいろいろな箇所を触った手でそのまま顔を触ったりすると、眼の粘膜から感染する危険性もあります。

・正しいマスクの着用方法
  www.medicom-japan.com/special/mask.html
・正しい手の洗い方
  http://www.medicom-japan.com/special/hand-washing.html
・正しい手指消毒の方法
  http://www.medicom-japan.com/special/hand-hygiene.html
・マスクの正しいつけ方とうがいの仕方
  https://www.s-re.jp/magazine/health/30/

この新型肺炎がどこまで拡大するかはまだわかりません。亡くなられた方は高齢者や、糖尿病や高血圧、肝硬変などの基礎疾患を抱えていた方など、免疫力が低く、もともと健康状態が悪くなっていた方が重症化しやすいようです。
まずは自分の体調を整えて、風邪や季節性インフルエンザにも罹患しないように、しっかりと防御をして、日々の生活を送っていきたいと思います。


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台風19号について その1

いつもブログをご覧いただき、ありがとうございます。甚大な被害を残した台風19号から、1ヶ月が経過しました。復旧にはまだ程遠い地域が数多くあり、避難所での生活も続いています。今回はこの台風について取り上げたいと思います。1.台風の経過① かつてない勢力の強さ中心気圧が955hPa、強風域の半径が600kmにも及ぶ大型の台風19号が、静岡県の伊豆半島に10月12日午後7時前に上陸しました。気象庁は上陸3日前の9日に異例の早さ...

いつもブログをご覧いただき、ありがとうございます。
甚大な被害を残した台風19号から、1ヶ月が経過しました。復旧にはまだ程遠い地域が数多くあり、避難所での生活も
続いています。今回はこの台風について取り上げたいと思います。

1.台風の経過
① かつてない勢力の強さ
中心気圧が955hPa、強風域の半径が600kmにも及ぶ大型の台風19号が、静岡県の伊豆半島に10月12日午後7時前に上陸しました。気象庁は上陸3日前の9日に異例の早さで記者会見を開いて警戒を呼びかけ、12日以降は静岡、山梨、長野、
神奈川、東京、埼玉、群馬、栃木、茨城、福島、宮城、岩手、新潟の13都県に数十年に一度レベルの大雨に対して発令される「大雨特別警報」を発表しました。
台風19号は、24時間で勢力が強まる「急速強化」が起き、一時は1分間の平均風速が67m以上のスーパー台風並みに成長しました。海面水温が高い海域を移動し、強い勢力と東日本を覆う大きさを維持して上陸しました。
海上の水蒸気をエネルギー源とする台風は、海面水温が27℃より高いと発達しやすくなります。19号が発生した10月6日の
南鳥島近海の太平洋は、海面水温が平年より1度高い30℃で、19号は7日までに中心気圧が77hPaも急降下して915hPaになるなど、極めて強い勢力に発達しました。日本に近付く台風は、近付くと共にその勢力が弱くなってきます。しかし今回は日本近海の海面温度も27~28℃と高かったためその勢力はあまり落ちることがなく、中心気圧935hPaで四国沖に到達しました。
気象庁によると10月10~13日の最大瞬間風速は、東京都江戸川区で秒速43.8m、東京都大田区で秒速43.7mなど、奈良県から岩手県までの14地点で観測史上1位を記録していました。
四国から東北にかけての太平洋側では潮位も上昇し、静岡県の石廊崎と御前崎、清水港、神奈川県小田原市、伊豆諸島の三宅島の5地点で、観測史上1位を記録しました。

② 途轍もない降水量
9月の台風15号は「風」による甚大な被害が発生しましたが、今回の台風19号は記録的な大雨をもたらしました。13都県に発令された大雨特別警報は、昨年の西日本豪雨の際に発表された11府県を上回り、最も多くなりました。
気象庁によると、13日午後3時までの48時間雨量は、神奈川県箱根町で1001ミリ、静岡県伊豆市で760ミリに達しました。
いずれも年間総雨量の3~4割で、箱根の1001ミリは新記録になりました。
24時間雨量も、宮城県丸森町で588ミリ、福島県川内村で441ミリ、岩手県普代村で437ミリ、福島県白河市で371ミリ、
宮城県白石市で357.5ミリを始めとして、18都県102地点で「観測史上1位」を更新しました。また関東や東北の山間部を中心とした94地点で、1ヶ月の降雨量の2倍以上に相当する雨量を記録しました。
■気象庁 特別警報について
  http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/tokubetsu-keiho/index.html


③ 同時多発的な氾濫
記録的な大雨の結果、東日本を中心に河川の氾濫が同時多発的に発生し、流域は大規模な浸水被害に見舞われました。
台風の雲が本州の半分を覆うほどの大きさで、特に北側の部分が発達していたため、日本に上陸する前から広範囲で大雨となり、河川の下流だけではなく上流でも増水したことで、雨のピークを過ぎた後も各地で河川の氾濫が相次ぎました。
中でも堤防が決壊した千曲川では、上流部にある長野県上田市や佐久市などで平年の10月1ヶ月間に降る雨の2倍以上の降水量を観測しました。
国土地理院が航空写真やインターネットで投稿された写真と標高データを組み合わせ、吉田川(宮城)、阿武隈川(福島・宮城)、那珂川(栃木・茨城)、越辺川(埼玉)、千曲川(長野)などの浸水範囲や深さの状況を計算しました。
調べた地点で最も浸水が深かったとみられるのが、水戸市の那珂川やその支流周辺の低地で、ビル3階の床上浸水に相当する約7.2mにもなりました。近くの常磐道・水戸北スマートインターチェンジも水没しました。千曲川の堤防決壊現場付近(長野市)では南北約5キロにわたり浸水。北陸新幹線の車両が水に浸かった「長野新幹線車両センター」の北側が最も深く、約4.3mとみられます。このほか阿武隈川では、福島県桑折町の一部で深さ約5.2mに達したと推計されています。
■国土地理院 浸水推定段彩図(速報)
  https://www.gsi.go.jp/BOUSAI/R1.taihuu19gou.html#11

2.台風による被害
① 死者・行方不明者
11月11日の時点で、13都県で死者91名、行方不明5名の人的被害が出てしまいました。特に宮城県では死者19名と最も多くの犠牲者が出ました。特に今回は、車での避難や移動の途中に死亡した「車中死」が9県で22名に上りました。浸水で車が水没したり、道路の崩落で川に流されたりしたケースもありました。相模原市では親子7人、福島県郡山市では親子3人の車が巻き込まれました。これにより、津波の場合も同様ですが、災害時に車で避難することの危険性が浮き彫りになりました。

② 堤防決壊
国土交通省によると、堤防の決壊は71河川、140ヶ所で発生しました。川の水が溢れる氾濫も、多くの河川で起きました。千曲川や阿武隈川など大きな川やその支流で被害が相次ぎ、浸水した面積は少なくとも17都県の3万4800ヘクタールという広範囲に上りました。これは昨年7月の西日本豪雨の2倍近くに当たります。

③ 土砂災害
20都県で発生した土砂災害は884県に上り、一つの台風被害としては過去最多を更新しました。国土交通省のまとめによると、崖崩れが442件、土石流等が398件、地滑りが44件に上りました。土砂災害による死者は計14人になり、宮城県で5人、群馬県で4人と多くなりました。

④ 鉄道被害
鉄道にも大きな影響が出ました。国土交通省によると、10月13日午前3時半の時点で、83事業者254路線が運転見合わせになっています。北陸新幹線は長野市の車両センターが浸水し、全体の3分の1にあたる10両編成120両が水に浸かりました。
現在は全線復旧しましたが、運転本数は通常ダイヤより約1割少なくなっています。浸水した120両は、車両下部の電気配線の内部に浸水したため修理は難しく、全て廃車にすることが決定し、JR東日本では約118億円もの損失になるようです。また神奈川県の箱根登山鉄道は箱根湯本-強羅間の8.9kmでは、複数箇所で土砂崩れが発生。線路流出や電柱倒壊が相次ぎ、年内の運転再開が困難な状況になっています。長野県の上田電鉄や栃木県の東武佐野線、茨城県の水郡線でも、線路の流出や鉄橋の崩落で一部区間の再開の目途が立っていません。岩手県の三陸鉄道リアス線は線路などに土砂が流入したため、全長163kmのうち、今年3月に東日本大震災以来8年ぶりに運転再開した釜石-宮古間を含む7割が不通になり、復旧の見通しは立っていません。

⑤ 住宅被害
11月11日午後5時現在の読売新聞のまとめによると、全・半壊551棟、一部損壊2431棟、床上浸水2万6439棟、床下浸水3万1372棟と5万7千棟以上が浸水被害に遭いました。避難所には今も約2,400人が身を寄せています。浸水に見舞われた地域は、水が引いた後も不衛生な環境のため、感染症などの健康被害が懸念されています。

⑥ 医療施設等被害
厚生労働省によると、医療施設では222施設が被災。このうち断水が142施設で、ほかにも浸水や停電の被害が出ました。高齢者や障害者の関係施設などでも、浸水などの被害が多数確認されました。病院や特別養護老人ホームでは、患者や入所者らが一時孤立しましたが、幸いにも早い判断で上層階に避難していたので、人的被害はありませんでした。
医療施設以外では、公立図書館だけでも雨漏り57館や浸水13館など、計109館で被害が確認されました。このほか、東京都市大学世田谷キャンパスの図書館では、近くの川から溢れたとみられる水が押し寄せて地下1階が水没。収蔵図書を中心に約8万3000冊が被害を受けました。

⑦ 農林水産被害
台風19号と翌週の台風21号による農林水産被害は、11月11日現在で2,511億円に上りました。過去10年間の風水害では、西日本豪雨の3,409億円に次ぐ金額です。被害は38都道府県と広範囲に及び、5,585ヶ所の農地が流出・浸水したほか、用水路や農道など7,308ヶ所の農業用施設が壊れました。農業用ハウスの損害も15億円に上ります。農家の収穫期が直撃され、果物やコメ、野菜など85億円の農作物が台無しになったほか、リンゴやモモなどの樹木も倒れ、4億円の被害が確認されました。
漁港では施設が壊れ、流木が湾内を埋め尽くして漁業を再開できない地域も多くなっています。水産関係の被害は95億円に及び、林道が崩れるなど林野関係の被害は267億円となっています。

■内閣府 防災情報のページ 台風19号に係る被害状況等について
  http://www.bousai.go.jp/updates/r1typhoon19/index.html

次回は、今回の台風で明らかになって来た問題点を取り上げたいと思います。



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新潟・山形大地震

いつもブログをご覧いただき、ありがとうございます。山形県沖を震源とするマグニチュード6.7の地震が発生して、25日で一週間が経過しました。この地震では新潟県村上市で震度6強が観測されました。今回はこの地震について取り上げたいと思います。1.発生状況6月18日22時22分に、山形県沖、深さ10kmを震源とするM6.7(速報値はM6.8)の地震が発生しました。新潟県村上市で震度6強、山形県鶴岡市温梅川で震度6弱、山形県鶴岡市温梅...

いつもブログをご覧いただき、ありがとうございます。
山形県沖を震源とするマグニチュード6.7の地震が発生して、25日で一週間が経過しました。この地震では新潟県村上市で震度6強が観測されました。今回はこの地震について取り上げたいと思います。

1.発生状況
6月18日22時22分に、山形県沖、深さ10kmを震源とするM6.7(速報値はM6.8)の地震が発生しました。
新潟県村上市で震度6強、山形県鶴岡市温梅川で震度6弱、山形県鶴岡市温梅と道田町で震度5強、新潟県阿賀町、長岡市、柏崎市、山形県酒田市、三川町、大蔵村、秋田県由利本荘市で震度5弱、その他、東日本全域で揺れが観測されました。
余震活動は25日16時までに23回と比較的少なく、地震の規模も震度4が1回のみと、小規模な活動になっています。震源地の内訳としては、微妙な位置の違いで、山形県沖が6回、新潟県下越沖が17回となっています。
地震発生2分後の22時24分には、山形県、新潟県上中下越、佐渡、石川県能登に気象庁から津波注意報が発令されました。新潟で最大波0.1mの津波が観測されましたが、その他の地域では第1波識別不能で、翌19日01時02分に津波注意報を全て解除されました。
幸いにもこの地震による死傷者はなく、負傷者が宮城・秋田・山形・新潟・石川の5県で計36人が負傷し、うち9人が重傷でした。建物被害は最大震度6強を記録した新潟県村上市で、半壊が10棟、一部損壊は362棟にのぼりました。

2.地震の特徴
今回の地震は、北海道沖から新潟県まで続く「日本海東縁ひずみ集中帯」と呼ばれるエリア内で発生しました。
ひずみ集中帯は、東日本をのせた北米プレートと、大陸側のユーラシアプレートの境界に沿っています。北米プレートは東側から押されており、日本海東縁部には東西に圧縮する力が働いて、地震を起こすエネルギーとなる「ひずみ」がたまっています。
このひずみ集中帯では、古くは1833年庄内沖の地震(M7.5)、1964年新潟地震(M7.5)、1983年日本海中部地震 (M7.7)、1993年北海道南西沖地震(M7.8)、2004年新潟県中越地震(M6.8)、2007年新潟県中越沖地震(M6.8)と大地震が相次いでいます。政府の地震調査委員会は、今回の地震は1964年の新潟地震の震源に隣接した場所で起きているという見解をまとめました。
1964年の新潟地震では新潟市内で液状化現象が起き、県営アパートが大きく傾き、そのうち1棟はほぼ横倒しになりました。

◆防災科学技術研究所 1964年新潟地震オープンデータ特設サイト
 http://ecom-plat.jp/19640616-niigata-eq/index.php?gid=10020
またこの地域を震源とする地震は、直後に津波が発生することも特徴的です。日本海中部地震では死者104名、北海道南西沖地震では死者・行方不明者230名を出しました。

青森県防災ホームページ 日本海中部地震
http://www.bousai.pref.aomori.jp/DisasterFireDivision/archivedata/earthquakeoverview/japanseachubu/index.html 

北海道南西沖地震 現地調査写真リポート (山村武彦)
 http://www.bo-sai.co.jp/sub8.html

今回の地震でも、地震発生2分後には津波注意報が発令されました。幸いにも観測された津波は10cmでしたが、過去の地震の記憶がある住民達は、地震直後にすみやかに高台への避難行動をとりました。日頃から家族で話し合ったり、避難通路の確認も行われていました。緊急停止した電車では、津波を心配した乗務員が自らの判断で乗客を高台へ誘導しました。JR東日本新潟支社では乗客の避難誘導訓練を毎年行っており、普段からの実践的な訓練の結果が出たと言えるでしょう。

3.避難に際しての課題
新潟・山形地震では、津波を予測した住民のすみやかな避難行動がありました。その中で、高齢者の避難を住民が手助けするケースが目立ちました。
新潟県村上市のある地区では、支援が必要な高齢者らのかかりつけ医や、避難支援を担当する住民の名前をそれぞれカードにまとめ、住民同士が情報を共有しています。この情報共有により、80歳代の女性を車に乗せて避難所へ向かった住民もおりました。しかし、同じ村上市の別の地域では体制が不十分で、自宅に取り残されて怖い思いをした一人暮らしの車いすの高齢者もおりました。
1995年の阪神淡路大震災の震源地である淡路島の北淡町では、近所付き合いが密接で、家のどこに寝ているかを住民同士が周知している関係でした。そのため倒壊した家屋からの救出もスムーズで、多くの方が住民の手により助け出されました。
地震や風水害を経験した地域では、町内会や集合住宅内で情報交換を行い、一人では避難が難しい高齢者やハンディキャップのある方を把握して、支援する担当者を決めたり、行政と協議を重ねている地域もあります。しかしこのような体制が整っている地域はまだまだ少なく、全く何も為されていない地域が数多くあります。

南海トラフ地震では事前避難地域が策定されました。東西に長い震源域の片側で地震が発生する「半割れ」ケースを想定し、まだ被害が及んでいない残り半分側の沿岸地域の住民にも、後発地震警戒のため1週間の避難を呼びかけるものです。避難場所の確保など課題も多くありますが、高齢者や一人では避難出来ない方々の命を救うことに繋がります。
南海トラフ地震や首都直下型地震は将来必ず発生します。豪雨災害や火山噴火も起きるでしょう。その際に、どのような行動をとるのか。事前に十分に検討して対策を立てておくことにより、命を救うことが出来ます。過去の災害を振り返り、どのような被害があったのか。何がいけなかったのか。何を改善していけばよいのか。過去からの経験を活かしてゆくことにより、更に良い方法があるのかを深く模索して、学びを活かし、知恵を活かし、常に良い状態にしておくことで、イザという時に迷うことなく行動することが出来、自分だけではなく多くの命を救うことが可能になります。



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火山噴火に遭遇したら

いつもブログをご覧いただき、ありがとうございます。5月19日に箱根山の火山噴火レベが2(火口周辺規制)に引き上げられて、約1ヶ月が経過しました。活動が更に激しくなるのか、それとも落ち着いていくのか、現在のところ今後の見通しがたっていません。箱根山を始めとして日本中の火山がある場所は、国立公園に指定されていたり、豊富な温泉が湧き出る観光地になっています。そこを訪問する観光客の殆どが、火山の麓へ行くという意...

いつもブログをご覧いただき、ありがとうございます。

5月19日に箱根山の火山噴火レベが2(火口周辺規制)に引き上げられて、約1ヶ月が経過しました。活動が更に激しくなるのか、それとも落ち着いていくのか、現在のところ今後の見通しがたっていません。
箱根山を始めとして日本中の火山がある場所は、国立公園に指定されていたり、豊富な温泉が湧き出る観光地になっています。そこを訪問する観光客の殆どが、火山の麓へ行くという意識は持っていません。山頂近くまでロープウェイが通っている山もあり、気軽に観光が出来ます。登山を目的とする人とは異なり、このような観光客は何の装備も持っていません。
今回は、そのような観光地に滞在している時に火山噴火に遭遇したら、ということについて考えてみたいと思います。

1.火山噴火にそなえる

(1) 噴火警戒レベル
日本にある110の活火山のうち、火山噴火予知連絡会によって「火山防災のために監視・観測体制の充実等が必要な火山」として選定された50火山が、気象庁により24時間体制で監視・観測されています。そのうち、45火山(令和元年5月現在)で噴火警戒レベルが運用されています。
噴火警戒レベルは、火山活動の状況に応じて警戒が必要な範囲と、防災機関や周辺住民が
とるべき対応を、5段階に区分して発表しています。

レベル1:活火山であることに留意
 火山活動は静穏。活動の状態によっては、火口内で火山灰の噴出等が見られる

レベル2:火口周辺警報
 火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生、あるいは発生すると予想される

レベル3:入山規制
 居住地域の近くまで重大な影響を及ぼす噴火が発生、あるいは発生すると予想される

レベル4:避難準備
 居住地域に重大な被害を及ぼす噴火が発生すると予想される

レベル5:避難
 居住地域に重大な被害を及ぼす噴火が発生、あるいは切迫している状態にある.。

以前はレベル1は「平常」となっていましたが、この「平常」という言葉は安全であるとの誤解を招くことから、2014年9月の御嶽山噴火を受けて現在の「活火山であることに留意」に改められました。

(2) 噴火速報
2015年8月から新たに導入されたもので、50の常時観測火山で噴火が起きた場合に、登山者や周辺住民にすみやかに発表し、命を守るための行動がとれるようにするものです。速報は、気象庁のホームページやテレビ、ラジオ、携帯端末などに配信されます。山中には携帯電話が通じない場所も少なくないため、自治体の防災無線で放送も行います。火口が見えない場所にいる登山者や観光客らに避難を促し、噴石や火砕流などに襲われる危険を減らすのが狙いです。
なお噴火速報は、普段から噴火している火山に、普段と同じ規模の噴火が発生した場合や、噴火の規模が小さく噴火が発生した事実を確認できない場合は発表されません。

◆気象庁 噴火速報を提供する事業者
https://www.data.jma.go.jp/svd/vois/data/tokyo/STOCK/kaisetsu/funkasokuho/funkasokuho_toha.html

2.火山噴火がもたらす事象
火山噴火が発生すると、人命にかかわる数々の事象が発生します。以下にそれらを紹介します。

(1) 噴石と火山弾
爆発的な噴火によって、小石や大きな岩石が空から降ってきますが、これを噴石といいます。大きな噴石は風の影響を受けずに四方に飛び散ります。建物の上に落下したら屋根を突き破るほどの破壊力があり、人に当たって死傷した例もあります。
火山弾は、噴出したマグマが流動性をもったまま、空中を弾丸のように飛んでくるものです。かなりの高温の状態で飛んでくるので、当たったらひとたまりもありません。
2014年の御嶽山噴火の犠牲者は、この噴石や火山弾が当たり命を落としました。これらから身を守るには、遠くへ逃げるか頑丈な建物に逃げ込むしかありません。

◆防仁学 阿蘇山噴火!「噴石」の脅威に備えるには?
 https://bohjingaku.com/funseki/

(2) 火砕流
火砕流は、マグマの破片や空気、水蒸気、火山ガス、岩石のかけら、火山灰などが一体となって流れてくる現象です。火砕流は500℃を超す、モクモクとした煙のようなものが、地面を這うようにして時速100kmを上回る猛烈な勢いで流れ下っていきます。もし火砕流に巻き込まれたら、そこから逃げ出すことは全く不可能です。そしてこの高温高速の煙の流れは、通過した地域を全て焼失させ壊滅させてしまいます。1991年の雲仙普賢岳で多くの犠牲者が出た原因は、この火砕流でした。

◆NHKアーカイブス 雲仙普賢岳火砕流
 https://www2.nhk.or.jp/archives/tv60bin/detail/index.cgi?das_id=D0009030241_00000


(3) 溶岩流
火口から出た溶岩が、液体のまま斜面を下って流れていくのが溶岩流です。そのスピードは、マグマの粘り気や火山の地形などによって異なりますが、それほど速くはなく、走って逃げることは出来ます。溶岩流はやがて冷えて固まり流れを止めるので、それほど広範囲に流れることはありません。けれども溶岩流は1000℃もの高温で流れるため、溶岩流の進路にある森林や家屋、農地などをことごとく焼き尽くし、溶岩の下に埋もれさせてしまいます。
また溶岩流は山頂だけではなく、山体の地質が脆い線に沿って出来た数珠つなぎの火口や、一連の「割れ目噴火」からも噴出します。日本では伊豆大島や三宅島などで割れ目噴火が発生し、溶岩流が流下しました。

◆ハワイ・キラウエア火山噴火
 https://www.youtube.com/watch?v=GjWTR3ZZotc


(4) 火山ガス
火山の噴火による被害で最も長期的な影響を及ぼすのが火山ガスです。人体に多大な悪影響を及ぼすため、ガスが低濃度になるまで近づくことは不可能で、過去には50年以上も立ち入ることが出来なかった事例もありました。
火山ガスの主成分は水蒸気が95~99.5%を占め、この他に二酸化硫黄、硫化水素、塩素、フッ素、水素、二酸化炭素、一酸化炭素などを含みます。活動している火山地域は日常的に噴気と呼ばれる火山ガスを排出しています。箱根の大涌谷など「硫黄臭」があるガスは危険を察知しやすいですが、二酸化炭素などの無色無臭の気体は気付くのが困難で、登山中の死亡事故も発生しています。
平成12年(2000年)から活動を始めた三宅島では、多量の火山ガスが放出され、それが集落などの居城地域に流下し続けました。そのため三宅島の住民は噴火が一段落しても、4年半におよぶ長期の避難生活を強いられました。

◆火山ガスと防災 日本火山学会第9回公開講座
 http://www.kazan-g.sakura.ne.jp/J/koukai/02/hirabayashi.html


(5) 火山灰
噴火によって噴出した直径2mm以下の物体を火山灰といいます。空気中で冷え固まったマグマが細かく砕かれたもので、「灰」とありますが実際にはガラス片や鉱物結晶片になり、人体に悪影響を及ぼします。目に入ると角膜剥離や結膜炎を引き起こし、呼吸で吸い込むことにより鼻や喉の炎症を起こしたり、ぜんそくや気管支炎を引き起こす可能性もあります。
火山灰は空中高く舞い上がり、上空の風に乗って広範囲に運ばれて行きます。大量の降灰は農作物に被害を与えるだけではなく、社会インフラに大きな打撃を与えます。降り積もった火山灰の厚さが僅か1mmでも、車や鉄道が運行中止になる可能性があります。また火山灰は精密機器に入り込み故障を引き起こすと考えられ、様々な情報システムにより制御されている現代社会は大混乱を招き、その復旧までには膨大な時間がかかってしまいます。
雨が降ると火山灰はセメントのように固まり、かつ重量が増すため、10cmほどの降灰でも家屋の崩壊を招いてしまいます。濡れた火山灰が付着した送電線は漏電を起こし、停電や火災の発生につながりかねません。

◆Bousai Tech 火山灰の災害対応を行う上で注意するべきこと
 https://bousai-tech.com/saigai/ash/

◆気象庁 降灰予報の説明
 http://www.data.jma.go.jp/svd/vois/data/tokyo/STOCK/kaisetsu/qvaf/qvaf_guide.html


3.火山噴火に遭遇したら
火山を登山している時や、周辺の観光地にいた時に突然噴火が起きた場合、噴火直後に何よりも大切なのは、噴石など噴出する固形物から身を守ることです。そのためには、すみやかに山小屋や避難小屋など安全な場所に逃げるしかありません。観光客が逃げ込むためのシェルターが設置されている火山もあります。噴火直後には噴石や火山弾が飛んでくることを知っておき、堅固な建物に避難します。間に合わない時は、大きな岩陰に身を隠します。逃げる時には、リュックサックやカバンなどで、ひとまず頭や背中を保護することが重要です。
噴石の放出は、しばしば断続的に起きます。噴石が少なくなったと判断してシェルターなどから出て行動すると、再び放出を始めた噴石に襲われることもあるので、注意することが大切です。
火山灰に対しては、火山灰を吸わないようにタオルやハンカチで口元を覆います。火山灰が目に入ったら、こすらずに持参した水で流します。とにかく呼吸器や目を守ります。
避難の際には、噴煙を浴びないように出来るだけ風上方向へ避難します。また火砕流などが流れる谷筋や窪地は避けて避難します。

火山噴火は地震とは異なり、低周波地震や山体膨張を観測することで、事前に噴火を予測することが比較的可能です。2000年の北海道有珠山の噴火の際には、この山の噴火のクセを熟知した北大有珠山火山観測所の所長により事前に勧告がなされ、大規模な噴火にも関わらず一人の犠牲者も出すことはありませんでした。
しかし個々の火山によって、そのクセは異なります。御嶽山の噴火では、低周波地震が観測された直後に噴火が始まりました。桜島のように観測者が常時いる火山は別として、多くの火山では噴火に至りそうな現象が現われても、どれだけの期間を経て噴火するのか、または収まるのか把握できていません。
登山や温泉地などに観光へ行く際は、現地のお天気情報と共に必ず火山の状況もチェックして、楽しい時間を過ごしていただければと思います。

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