箱根山について

いつもブログをご覧いただき、ありがとうございます。5月19日に箱根山の噴火警戒レベルが1(活火山であることに留意)からレベル2(火口周辺規制)に引き上げられました。今回はこの箱根山について取り上げたいと思います。1.現在の状況 神奈川県の箱根山では、5月18日から火山性地震が増加しており、大涌谷周辺の火口ではさかんな噴気活動が続いているとして、気象庁は19日2時15分に噴火が発生する恐れがあるとして、噴火警戒レベ...

いつもブログをご覧いただき、ありがとうございます。
5月19日に箱根山の噴火警戒レベルが1(活火山であることに留意)からレベル2(火口周辺規制)に引き上げられました。今回はこの箱根山について取り上げたいと思います。

1.現在の状況
 神奈川県の箱根山では、5月18日から火山性地震が増加しており、大涌谷周辺の火口ではさかんな噴気活動が続いているとして、気象庁は19日2時15分に噴火が発生する恐れがあるとして、噴火警戒レベルを2に引き上げました。
箱根山では18日午前5時頃から芦ノ湖の西岸と駒ヶ岳付近を震源とする火山性地震が増加しました。5月に入ってから17日まで、一日に発生する地震の回数は0~4回にとどまっていましたが、18日は45回と急増しました。19日午後3時の時点で、すでに48回の地震が観測されています。19日は午前9時前に神奈川県箱根町湯本などで震度1の揺れが観測された地震も起きました。

 地下のマグマや水蒸気の動きを示す火山性微動や低周波地震はまだ観測されていませんが、大涌谷に設置した監視カメラの観測では、火口から勢いよく噴気が噴出しています。また今月3月中旬頃から、仙石原や湯河原などの観測地点の一部で、わずかに山が膨らむ地殻変動が捉えられているようです。
大涌谷の想定火口域の中では、噴火に伴う大きな噴石に警戒すると共に、自治体などの指示に従って危険な地域には立ち入らないよう呼びかけています。

 噴火警戒レベル引き上げに伴い、1km余り手前で夜間通行止めになっていた大涌谷につながる県道が、終日通行止めになりました。また大涌谷周辺を通る箱根ロープウェイは19日から運休になり、代行バスを運行することになりました。
神奈川県の黒岩知事は、「2015年に火山活動が活発化して以降、県は火山観測体制を充実・強化しました。また、箱根町や事業者らと協力して火山避難計画を策定し、実動訓練を実施するなど人的被害ゼロに努めてきました。火口周辺警報の対象地域は、広い箱根のごくごく一部の限られたエリアで、県や町が発表する情報を見た上で、冷静に対応して下さい」と呼びかけています。

■神奈川県HP 防災・消防 箱根火山における地震活動について
 http://www.pref.kanagawa.jp/docs/j8g/owakudani_0519.html

2.2015年の活動
 前回、箱根山の活動が盛んになったのは、2015年4月でした。4月に入り149回の火山性地震が観測され、特に4月1日~25日には9回だった火山性地震が、翌26日から5月3日にかけては142回に急増しました。そのため突発的な水蒸気噴出の恐れがあるとして、箱根町は大涌谷周辺のハイキングコースと大涌谷自然研究路の閉鎖を決めました。5月4日も午後10時までに29回の火山性地震が観測され、わずかな山の膨張を示す地殻変動も見られましたが、その他に大きな変化はなく、この時点では「噴火に結びつくような兆候は確認されない」として、噴火警戒レベルも1のままでした。
しかし5日になると、箱根山を震源とする震度1の地震が3回観測されました。箱根山で体に揺れを感じる「有感地震」が起きたのは2011年3月以来で、火山性地震も一日の観測史上最多となる116回が観測されました。そして高圧ガスやマグマの熱で温められた地表近くの地下水が爆発的に噴き出す「水蒸気爆発」が想定されるとして、5月6日に噴火警戒レベルを2(火口周辺規制)に引き上げました。

 その後も大涌谷で活発な噴気活動が続き、6月30日には603回もの火山性地震が記録され、ごく小規模な噴火が発生しました。この噴火を受けて噴火警戒レベルが3(入山規制)に引き上げられ、区域内の32棟に避難指示が出されました。噴火が起きた噴気孔とは別に、新たに三つの噴気孔も確認され、大涌谷周辺では4月下旬から最大33cmの隆起がありました。
9月に入り、噴気活動は活発だが火山活動は低下しているとして、噴火警戒レベルが3から2に引き下げられました。立ち入り禁止区域も大涌谷の火口から半径500mに縮小されたため、10月にはロープウェイも一部区域で運行が再開されました。
11月20日には火山活動が以前の状態に戻ったということで、半年ぶりに噴火警戒レベル1に引き下げられました。しかし高濃度の二酸化硫黄ガスが検出される時もあるため、大涌谷周辺の立ち入り禁止区域は維持されました。2014年に発生した御嶽山の噴火で死者・行方不明者が計63人に上ったことを教訓に、「命を守ることが最優先」という基本方針が貫かれたからです。

3.箱根山の活動の歴史
 箱根山は約65万年前から、水蒸気爆発やマグマ噴火を繰り返して来ました。6万年前にはプリニー式噴火に引き続いて、カルデラの陥没を伴うクライマックス噴火が起きて、大火砕流が発生しました。この火砕流の痕跡は、東は現在の横浜市保土ヶ谷区や三浦半島、西は静岡県沼津市を越えて富士宮市でも確認されました。約3000年前の水蒸気爆発では山が崩れ、川が堰き止められて芦ノ湖ができました。
最後の噴火は鎌倉時代の12~13世紀頃で、ここ数百年間は静かでしたが、火山性地震が増えるなど、火山活動が時折高まることがありました。

 6万年前の噴火での火砕流は、箱根から1時間以内に横浜まで到達したと思われます。もし、今、同規模の火砕流が発生したら、500万人近い人が「瞬殺」になってしまいます。箱根山ではこのクラスの大噴火が、過去30万年間に4度も発生しています。この火山の地下で、同じメカニズムでマグマが蓄積して大噴火に至るとすれば、箱根火山は約7万年に一度大噴火を繰り返す「くせ」があると言えます。確率で表すと、今後100年間に大噴火が起きる確率は0.2パーセント。一見低い確率に思えますが、明日起きても不思議ではないことを示しています。さらに壊滅的な被害を考えると、箱根山大噴火の「危険値(=想定死亡者数×年間発生確率)」は100人近くになり、何と毎年のように起きる豪雨災害に匹敵してしまいます。

■気象庁 箱根山 有史以降の火山活動
 http://www.data.jma.go.jp/svd/vois/data/tokyo/315_Hakoneyama/315_history.html

■箱根町HP 箱根火山のおいたち
 http://www.town.hakone.kanagawa.jp/index.cfm/10,1208,46,167,html

 今回の箱根山の火山活動が2015年のような小規模な噴火で済めば、影響を受けるのはごく一部の地域だけです。今後ますます活動が激しくなるのか、それとも収束に向かうのか、現時点ではまだわかりません。周辺地域にお住まいの方や、これから箱根に行かれる方は、最新の情報を確認して身の安全に努めていただければと思います。

■箱根町HP 箱根町周辺の火山・地震活動
 http://www.town.hakone.kanagawa.jp/index.cfm/10,1206,46,166,html

■箱根町HP 大涌谷周辺の観光客等の避難誘導マニュアル PDF
 http://www.town.hakone.kanagawa.jp/index.cfm/10,1204,46,166,html

■箱根町HP 火山防災マップ
 http://www.town.hakone.kanagawa.jp/index.cfm/10,1218,46,167,html





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熊本地震から3年

いつもブログをご覧いただき、ありがとうございます。観測史上初めて2回の震度7を記録した熊本地震から3年が経過しました。今回は熊本の現状について取り上げたいと思います。1.経 過2016年4月14日午後9時26分頃、熊本県熊本地方を震源とするM6.5の地震が発生し、熊本県益城町で震度7が観測されました。マグニチュードに対して震度が大きかったのは、震源の深さが11kmと浅かったためです。震度7が観測されたのは、兵庫県南部地...

いつもブログをご覧いただき、ありがとうございます。
観測史上初めて2回の震度7を記録した熊本地震から3年が経過しました。今回は熊本の現状について取り上げたいと思います。

1.経 過
2016年4月14日午後9時26分頃、熊本県熊本地方を震源とするM6.5の地震が発生し、熊本県益城町で震度7が観測されました。マグニチュードに対して震度が大きかったのは、震源の深さが11kmと浅かったためです。震度7が観測されたのは、兵庫県南部地震(阪神淡路大震災)、新潟県中越地震、東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)以来の4回目で、九州では初めてのことでした。この地震は日奈久断層帯の活動によって引き起こされたもので、この地震に対しての余震はその日だけでも、震度6弱が1回、震度5弱が1回、震度4以下が37回と、総回数が40回に上りました。翌日15日は震度6強が1回、震度5弱が1回、震度4以下が110回と、総回数が112回にも上りました。
そして最初の地震が発生した28時間後の2016年4月16日午前1時25分頃、今度は隣接する布田川断層でM7.3の地震が発生しました。この地震では再度熊本県益城町で震度7、そして西原村でも震度7が観測されました。同じ地域で震度7が2回観測されたのは、今回が初めてです。この地震により、14日の地震が「前震」、16日の地震が「本震」ということが気象庁より発表されました。
震度6弱以上の揺れの地震が3日間で7回も発生し、その後、北東の阿蘇地方から大分県西部、さらに大分県中部の別府-万年山断層周辺へと、別府-島原地溝帯に沿って地震が相次ぎ、震度5弱以上の地震が23回も発生しました。震源近くにある阿蘇中岳では、本震発生後の16日午前8時30分頃に小規模噴火が発生、さらに10月8日には36年ぶりに爆発的噴火が発生しました。現在、阿蘇山では火山ガスの放出量が1日当たり2100トンと多い状態で、4月14日より噴火警戒レベルが2に引き上げられています。16日には小規模な噴火がありましたが、噴火警戒レベル2が維持されています。

2.熊本地震による被害
本年4月12日に消防庁が公表した資料によると、現時点での被害は、死者273人(直接死50人、関連死223人)、重傷者1,203人、軽傷者1,606人、住家全壊8,667棟、半壊34,719棟、一部損壊163,500棟、床上浸水114棟、床下浸水156棟、公共建物被害467棟、その他非住家被害12,918棟、火災15件となっています。全壊家屋数に比べて直接死者数が少ないのは、14日の前震によって住民が避難したため、本震で倒壊した家屋にいた人が少なかったからのようですが、逆に関連死の多さが目立ちます。
熊本県によると仮設住宅や自治体借り上げのみなし仮設の入居者は、ピーク時の4万7800人(2017年5月)と比べて約3割の1万6519人に減少しましたが、今年3月末現在でも7304世帯が残っています。入居期間は原則2年間ですが、「特定非常災害」に指定された熊本地震は、国の同意を得られれば入居期間を延長できます。熊本県は2017年10月に同意を得て約9000世帯に1年間の延長、その後、2度目の延長も決めました。
震度7の揺れに二度も襲われた益城町では、14日の地震後では瓦が落ち、外壁やブロック塀が崩れていても、まだしっかり建っている家が数多く残っていましたが、倒壊していない家屋を探す方が難しい地区が複数見られるなど、前日とは町の形が完全に変わってしまいました。益城町の区画整理事業は宅地を再配置し、道路拡幅や公園整備などを行い、宅地の配置決定まで住宅建設が出来ません。これらの公共事業で自宅再建ができない仮設入居者は249世帯あり、蒲島熊本県知事は3度目の延長を要望しており、当初2020年春に仮設住宅解消を目指した熊本県の方針は困難な状況となりました。
被災者の恒久的な住まいとなる災害公営住宅(復興住宅)は、4市6町2村が70団地計1717戸の整備を計画していますが、3月末までに完成したのは全体の3割程度の25団地計496戸にとどまっています。
避難生活の長期化は、被災者に様々な悪影響を及ぼします。熊本県の調査では、昨年末時点で仮設暮らしの半数近い世帯が資金や家族、心身などに何らかの事情を抱えていました。特に留意すべき点は、孤独死した被災者28人のうち22人がみなし仮設に住んでいたことです。低コストで速やかに入居できる利点がある反面、広範囲に点在しており、被災者同士のつながりを保つことが難しくなっています。自治体では「地域支え合いセンター」を設置して、相談員らが入居者を訪問して相談に乗る見守り活動を行っていますが、あくまでも仮設入居者が対象であり、今後、退去した人への支援をどうするかなど、孤立しがちな被災者を支える活動がまだまだ必要になります。

3.熊本城の被害
熊本城では地震により倒壊・崩落・一部損壊等を含め、櫓や門など重要文化財に指定されている13棟、そして復元建造物20棟のすべてで深刻な被害が出ました。石垣は全体の約3割に当たる約23,600㎡に崩落や膨らみ・緩みなどで修復を必要とする箇所が見受けられます。その他、便益施設等26棟も屋根や壁が破損し、地盤についても約12,345㎡に陥没や地割れが発生するなど、熊本城全体に被害が発生しました。戦後に復元された大天守は、最初の地震で残っていた最上部の瓦がほとんど完全に落ちてしまい、シンボルとなっていたシャチホコも落下してしまいました。
■熊本市ホームページ 熊本城の被害状況 (PDF)
https://www.city.kumamoto.jp/common/UploadFileDsp.aspx?c_id=5&id=17236&sub_id=7&flid=128646

約20年にわたる復旧工事では、被災した場所、建物ごとに解体、測量、調査、耐震設計、復旧工事といった工程を順次進めていきます。国特別史跡の熊本城は、伝統的工法による復旧で文化財的価値を守りつつ、耐震性を高めることが求められます。その中でも困難なのは石垣の工事で、今回の地震により石垣全体の約3割が被害を受けましたが、その個数は推計7~10万個に及ぶと見られ、完全復旧にはまだまだ時間がかかります。
最優先で工事が進む天主閣は、大天守(地上6階、地下1階)の石垣の積み直しが終わり、外観工事が大詰めを迎えています。塗り直した白いしっくいや軽量化した瓦が、真新しい姿を見せています。小天守では石垣を積み直す工事が続いています。内部工事では、様々な揺れを軽減する装置や補助材を設置して耐震化を図り、エレベーターも設けます。2021年春には内部まで入れるようになる見通しです。
熊本市は復旧の過程を公開し、観光につなげるため、10月からの工事用通路を利用した特別公開に続けて、20年春をめどに、平日も利用できる「特別見学通路」を整備します。城彩苑の「熊本城ミュージアムわくわく座」では、映像技術を駆使して“見える復旧”に一役買っています。「被災・復旧プロジェクションマッピング」は、白色の熊本城の立体模型(100分の1)に映像を写し出し、城がどのように崩れたのか音を交えてリアルに再現しています。江戸時代の壮麗な城の姿を楽しめるVR映像も上映しています。また天主閣や飯田丸などの様子を館内のモニターに映し出す「定点ライブカメラ」は、様々なアングルから復旧工事の様子を見学できます。
■熊本城 城彩苑 http://www.sakuranobaba-johsaien.jp/

4.熊本地震復興への歩み
2016年
4月14日  午後9時26分、前震が発生。益城町で震度7を観測
  16日  午前1時25分、本震が発生。益城町や西原村で震度7
5月 6日  熊本県が益城町で仮設住宅の着工を開始
  19日  天皇・皇后両陛下が被災地を訪問
6月 3日  県内初となる仮設住宅が完成し、5日から入居開始
  27日  県が御船町の108世帯を「長期避難世帯」に初認定
8月14日  阿蘇大橋崩落現場で行方不明の大学生が発見され、直接死は計50人に
9月28日  県が熊本地震による被害額は3兆7850億円との試算を公表
11月14日 県が整備した16市町村の仮設住宅4303戸が完成
   18日 西原村の避難所が閉鎖され、ピーク時に18万人以上が利用した避難所はゼロに
2017年
3月28日  益城町の仮設住宅で男性の死亡を確認。初の孤独死
12月16日 熊本城の復旧基本計画素案を熊本市が公表。38年度までの完全復旧を目指す
2018年
1月30日  災害公営住宅(復興住宅)の建設開始
6月10日  初の復興住宅12戸が西原村に完成
11月30日 熊本城大天守の石垣の積み直しが完了
2019年
2月22日  県が、宇土市の長期避難世帯4世帯13人の認定を解除し、計483世帯1232人
      いた長期避難世帯はゼロに

完全復興への道のりはまだ長い熊本ですが、気がかりな点があります。それは防災意識の低下です。熊本県が昨年度実施した県民調査結果によると、災害への備えとして「水・食料等の備蓄」を挙げた回答が、地震のあった2016年度から10ポイント下がりました。
南海トラフ巨大地震、首都直下地震、千島海溝地震など、今後、必ず発生する大地震があります。地震列島の日本では、いつ大規模な揺れに見舞われるかわかりません。該当地域にお住いの方やそれ以外の地域にお住まいの方も、災害に備える準備を心掛けておきましょう。
■日本赤十字社 非常時の持ち出し品・備蓄品
  http://www.tokyo.jrc.or.jp/checklist/


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南海トラフ地震事前避難計画について

いつもブログをご覧いただき、ありがとうございます。桜や新元号の話題で盛り上がっていますが、そのニュースにまぎれて、「富士山の大規模噴火が起きた場合に都心に降り積もる火山灰の量について」と「南海トラフ地震事前避難計画について」という二つの重要なニュースがありました。南海トラフ地震については、昨年12月に事前避難計画についての報告書案がとりまとめられましたが、その具体的なガイドラインが公表されました。今...

いつもブログをご覧いただき、ありがとうございます。
桜や新元号の話題で盛り上がっていますが、そのニュースにまぎれて、「富士山の大規模噴火が起きた場合に都心に降り積もる火山灰の量について」と「南海トラフ地震事前避難計画について」という二つの重要なニュースがありました。
南海トラフ地震については、昨年12月に事前避難計画についての報告書案がとりまとめられましたが、その具体的なガイドラインが公表されました。今回はこのことについて取り上げたいと思います。

1.見直しの内容
南海トラフ地震(南海・東南海・東海地震)は100年から150年周期で繰り返し発生しており、直近の地震は1944年に昭和東南海地震、1946年に昭和南海地震が発生しました。東海地震の想定震源域は1854年の安政東海地震以来動いていませんでした。地震の観測網が整備され研究が進んでくると地震予知が出来ないという見方が強まり、更に前回の南海地震から70年以上が経過し、南海トラフ全域で起こる巨大地震を警戒する必要が出て来ました。見直しでは、新たに南海トラフ沿いの広域で、事前避難などを含めた防災計画を策定することを求めました。
南海トラフ地域の地震は、これまで駿河湾から四国沖にかけて複数の震源が同時に、もしくは32時間後や2年後などの時間差で発生しています。当初は南海トラフのどこかで実際に地震が発生した場合の避難を想定しましたが、前兆となり得る現象が起きた場合、被災していなくても避難を始めるなど、住民や企業がとるべき防災対応が示されました。
前兆現象としては、①巨大地震の想定震源域のうち、東側か西側のどちらかをM8以上の地震が襲う「半割れ」②想定震源域の一部でM7以上の地震が起きる「一部割れ」③想定震源域で断層がずれ動く「ゆっくりすべり」の3つです。
前兆現象が起きた場合「臨時情報」が出されますが、①~③のいずれかに当たると評価された時には、最短2時間以内で2回目の発表が行われます。その上で、
①の場合:直近の2事例(昭和と安政)で東西が連動した地震が起きているので、揺れに襲われていない側でも、地震発生後の避難では津波到達までに逃げ切れない地域の住民と、逃げ切れない可能性のある地域の高齢者や障害者らのあらかじめの避難
②の場合:過去の事例から①ほどの大地震が起きる可能性は高くないため自主避難を基本とし、期間は1週間程度
③の場合:避難を求めず、日常生活の中で警戒レベルを引き上げる
以上の3パターンに分けました。なお企業は①、②とも原則的に事業は継続します。

2.公表されたガイドライン
ガイドラインの基本的な考え方として、現在の科学では地震発生の正確な予測は出来ないため、「地震に備えつつ、通常の社会活動をできるだけ維持することが基本」とした上で、防災計画の方針を示しています。
まず住民の避難については、震源域の半分程度が先行してずれ動いてM8クラスの地震が起き、次の巨大地震に警戒が必要だとされた場合、最初の地震で被害が出ていない地域でも、一部の住民は一週間、事前に避難するとしました。ただし、まだ被災していないため、生活用品は自ら確保する必要があります。
事前避難の対象地域は、地震発生から30分以内に津波で30cm以上浸水する場所のうち、近くに避難ビルなどがなく、すぐに避難できない範囲です。また、避難に時間がかかるお年寄りなど「要配慮者」に限り、事前避難する地域も定めるとしています。

  「南海トラフ地震」の住民避難の流れと取るべき防災対応
【南海トラフでM8以上の地震発生】
        ↓
【発生地域外を対象に「臨時情報」】
        ↓
【政府が避難開始を呼びかけ】
        ↓
【市町村が「避難勧告」】 一週間継続
住民:津波からの避難が不可能な地域は避難
学校:臨時休校など適切な対応
水道・電気・ガス:営業継続
道路:車両走行を抑制
航空・海上:施設の利用制限
鉄道:一部運休など津波の回避措置を実施
病院:入院患者の引き渡しや転院の準備

ガイドラインでは、企業の対応に関しては、事前避難対象地域にある場合は危険を避ける措置を取るとした上で、日頃からの備えを再確認しつつ、出来る限り事業を続けることが望ましいとしました。鉄道などの交通機関は「安全性に留意しつつ、運行するための必要な対応をとる」、学校に対しては「事前避難対象地域では、臨時休校などの適切な対応をとる」というおおまかな考え方を示すにとどまっています。
今後、自治体や学校、企業などは個別に防災計画を検討することになりますが、それぞれの計画を調整の取れた内容にしていくことが課題となります。例えば、バスなど地域の交通機関が普段通り運行しなければ、出勤できなくなる人が増えたり、たとえ病院が診療を続けていても、そこへ行くことが困難になってきます。各分野で計画の足並みが揃わなければ、社会活動が停滞する可能性があります。

3.臨時情報の改善
一昨年より運用が始まった南海トラフの臨時情報は、あくまでも「普段と比べて、相対的に発生可能性が高まった」という不確実性がある情報で、発表されても地震が起きない「空振り」も考えられる一方、防災対応期間が終わった後で巨大地震が発生することもあり得ます。またこの情報が発表されないまま、いきなり巨大地震が発生する可能性もあります。このためガイドラインでは、臨時情報を活用して被害の軽減に繋げることが重要だとしつつも、普段から津波避難施設の整備や建物の耐震化、家具の固定などの備えを進めることが欠かせないとしています。
今回、南海トラフ沿いで異常な現象が観測された場合に発表される情報について、その名称を変えた上で「警戒」や「注意」など防災対応のキーワードを付けて、「南海トラフ地震臨時情報」として発表されることになりました。

<南海トラフ地震臨時情報「調査中」>
南海トラフ沿いでM7クラス以上の地震の発生や、異常な現象が観測された場合、調査を始めたことを示す「調査中」というキーワード付きの情報が発表されます。

<評価検討会>
その後、専門家で構成する評価検討会が巨大地震と関連があるか検討を行い、最短で約2時間後に結果を知らせる情報が発表されます。

<南海トラフ地震臨時情報「巨大地震警戒」>
一つが「巨大地震警戒」というキーワード付きの情報です。震源域の半分程度がずれ動いてM8クラスの地震が起き、次の巨大地震に対して警戒が必要とされた場合に発表されます。国のガイドラインが示した防災対応は「地震が発生した時に津波からの避難が明らかに間に合わない地域の住民は事前に避難する」などです。

<南海トラフ地震臨時情報「巨大地震注意」>
もう一つが「巨大地震警注意」というキーワードが付いた情報です。想定震源域やその周辺でM7クラスの地震が発生し、その後の巨大地震に注意が必要とされた場合に発表されます。この場合の防災対応は「日頃からの備えを再確認し、必要に応じて自主的に避難する」です。
また揺れが伴わずにプレートの境目がゆっくりとずれ動く「ゆっくりすべり」が、通常とは異なる場所などで観測された場合も「巨大地震警注意」の情報が発表されます。この場合の防災対応は「避難場所や家具の固定を確かめるなど、日頃からの備えを再確認する」です。


<南海トラフ地震関連開設情報>
これらの情報が発表された後の地震活動や地殻変動などの状況については、「南海トラフ地震関連開設情報」を随時発表するとしています。

「半割れ」発生時の情報提供の流れ
地震発生
 ↓
約30分後  南海トラフ地震臨時情報「調査中」
 ↓
最短2時間後  南海トラフ地震臨時情報「巨大地震警戒」
        → 津波の危険性が高い地域などで1週間の避難開始
 ↓
1週間後  国が「避難解除」を呼びかけ
      → 自宅に戻って警戒を続ける
 ↓
2週間後  国が「通常の生活」を呼びかけ
      → 日常の生活に戻る

今回のガイドラインは中央防災会議の昨年末の報告書を踏まえたもので、自治体は約1年後までに避難計画を策定します。しかし公表されたガイドラインでは「事前避難対象地域では臨時休業などの適切な対応をとる」としていますが、その他の地域について具体的な考え方は示されていません。また避難対象地域の選定や1週間生活出来る避難所の確保など、その課題は多くなっています。

■内閣府 防災情報 南海トラフ地震対策 
http://www.bousai.go.jp/jishin/nankai/index.html

        

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「噴火津波について」

いつもブログをご覧いただき、ありがとうございます。2019年を迎えたばかりの3日に、熊本県でM5.1、最大震度6弱の地震が発生しました。震度6弱が観測された和水町では一部塀の破損があったようですが、幸いにも大きな被害はなかったようです。マグニチュードに対して震度が大きかったのは、和水町周辺の地表付近に軟らかい地盤が存在し、その地盤の影響で揺れが増幅されたようです。年末の12月22日には、インドネシアのスンダ海峡...

いつもブログをご覧いただき、ありがとうございます。
2019年を迎えたばかりの3日に、熊本県でM5.1、最大震度6弱の地震が発生しました。震度6弱が観測された和水町では一部塀の破損があったようですが、幸いにも大きな被害はなかったようです。マグニチュードに対して震度が大きかったのは、和水町周辺の地表付近に軟らかい地盤が存在し、その地盤の影響で揺れが増幅されたようです。
年末の12月22日には、インドネシアのスンダ海峡で火山噴火による津波が発生し、500人以上の死者・行方不明者を出してしまいました。今回はこの噴火津波について取り上げたいと思います。

1.概 要
2018年12月22日午後9時半(日本時間22日午後11時半)頃、インドネシア西部のスマトラ島とジャワ島の間のスンダ海峡で津波が発生しました。特にジャワ島西部の海岸沿いで、甚大な被害が発生しました。この津波の原因は、スンダ海峡にあるアナク・クラカタウ山の火山活動により山体が崩壊し、海に流れ込んだ土砂により津波が発生したと考えられています。噴火後、20分ほどで津波が襲来し、死者429人、負傷者1,485人、行方不明154人、1万6000人以上が家を失うという被害が出てしまいました。津波の高さは3~4mで、標高13m付近まで遡上した場所もあったようです。
インドネシアでは2004年12月26日のスマトラ大地震以降、2005年、2009年、2010年にも津波を伴う大地震がありました。2018年7月以降も中部ロンボク島では地震が断続的に発生し、564人が死亡しました。9月28日には中部スラウェシ島で起きた地震と津波で、2101人の死亡が確認されました。これらの災害が続き、インドネシアの人々は津波の知識も持ち、「地震が起きたら津波が来る」と避難行動もとっていました。しかし、今回は地震の揺れもなく、いきなり津波が襲来したためより被害が拡大してしまいました。
■津波にのまれるライブ会場
動画サイトへ→ https://www.youtube.com/watch?v=RUaYf9uXTYs

アナク・クラカタウ山は2018年6月以降、ほぼ毎日のように噴火が観測されていました。現地の人々にとっては、噴煙を吐く火山島は日々の生活の景色の一部になっており、小さな噴火のたびに避難することは不可能でした。
アナク・クラカタウ火山島の位置にはもともとクラカタウ島という火山島が存在していましたが、1883年8月の噴火で大部分が消失しました。この時の噴火では
・最高で高さ41mの巨大な津波が発生して3万人以上が死亡
・噴出した高熱の火山灰で数千人が死亡
・噴火音は数千キロ離れた場所でも聞こえたという
・爆発後の1年で、世界の平均気温は摂氏1度以上低下した
このような激しい噴火でクラカタウ島はほとんど消滅し、その後、1927年の噴火によりアナク・クラカタウ島が誕生しました。
今回の噴火により、アナク・クラカタウ山の標高は噴火前の338mから1/3の110mになってしまいました。現地調査を行った研究者は「短い周期で次々と押し寄せた今回の津波は、地震による津波より瞬間的な破壊力が強かった」と指摘しています。22日の噴火後も、斜面から岩や火山灰などの崩落が続き、噴火活動も依然として活発なため、新たな津波の可能性もありインドネシア政府は警戒を呼びかけています。
国土地理院 「だいち2号」による画像
動画サイトへ→http://www.gsi.go.jp/cais/topic181225-index.html


2.日本でもあった噴火津波
今回の噴火による津波発生は、日本でも過去に多くの発生事例があります。その代表的な事例を紹介します。

(1) 北海道駒ヶ岳
1640年(寛永17年)7月31日、大規模噴火が発生して南側と東側の山体が一部崩落し、岩屑なだれが大沼と内浦湾になだれ込み津波が発生、沿岸で700余名が溺死しました。古文書の記録によると、津波の遡上高は最大8.5mあったようです。また山体崩壊と同時に火砕流も発生しました。山体崩壊後、8月2日まで軽石・火山灰を激しく噴出し、降灰、火砕流が発生、その活動は8月下旬まで続きました。

(2) 北海道渡島(おしま)大島
北海道南端の渡島半島の西側沖合約60kmに位置する渡島大島が、1741年(寛保元年)8月27日に大噴火を起こしました。山体崩壊から約10分後に半島西側の江差から松前にかけて、約15分後に奥尻島全域や、せたな町などを大津波が襲った記録が残っています。この津波による死者は1,467人で、最大の被災地は江差と松前の中間に位置する上ノ国町の石崎地区でした。50軒ほどあった家屋が全戸流失し、住民一人が生き残った以外は全て溺死したと伝えられています。この地区は海を隔てた渡島大島に面していたわけではなく、島との間には石崎川と、更に海側には砦が建つ高い丘陵がありました。しかし津波はこの丘陵を右から左へ乗り越え、建物を破壊したのです。丘陵の高さは海抜19.4mありましたが、渡島大島の噴火による津波は、この高さの丘陵を乗り越えるほど巨大なものでした。この津波の原因は、噴火による大規模な山体崩壊という説と、低周波地震によるものという説があります。
■北海道新聞 火山噴火が原因の津波
動画サイトへ→https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181230-00010000-doshin-hok.view-000

(3) 雲仙普賢岳
雲仙普賢岳は今から223年前、1791年~1792年にかけて噴火活動が活発化し、その最末期の1792年5月21日(寛政4年4月朔日)の夜、M6.4の地震が発生し、島原城下町の西側にそびえる眉山が大規模な山体崩壊を起こしました。崩壊した岩石や土砂が流れ、島原城下町南部と付近の農村を埋め尽くしただけでなく、有明海に流入して大津波を発生させました。この大津波は島原半島の沿岸や有明海対岸の熊本や天草の沿岸を襲い、さらに熊本の海岸で反射した津波は再び島原に返り被害を拡大させました。津波の遡上高は熊本側で15~20mとされ、三角町大田尾では22.5mに達しました。島原半島側では布津大崎鼻で57m以上との記録もあります。この災害による死者は島原側で5000人、肥後側で1万人にも達しました。この時の災害は「島原大変肥後迷惑」と呼ばれ、日本最悪の火山災害でした。
雲仙普賢岳は最近でも1990年から噴火が始まり、翌1991年6月3日に大火砕流が発生し、報道関係者や火山学者、消防団員など43名の死者、9名の行方不明者を出しました。
■国土交通省 九州地方整備局 雲仙復興事務所
動画サイトへ→http://www.qsr.mlit.go.jp/unzen/sabo/omake/02taihenki.html

2013年11月から始まった西ノ島の噴火では、もし山体崩壊が生じると、父島に1mを超す津波が来る可能性を示すシミュレーション結果が出ています。1896年の明治三陸津波は地震による津波でしたが、揺れ自体はかすかな揺れだったため、ほとんど警戒されていなかったところに巨大津波が押し寄せ、2万人を超える犠牲者が出てしまいました。
津波を発生させる要因は多様です。沿岸部などに残る過去の津波の痕跡を調べて、各地での発生メカニズムを検討することも、津波対策の充実になります。また津波の早期感知も大切になります。各地の沿岸や沖合などに設置した潮位計や波浪計、海底津波計が異変を捉えることが出来れば津波警報を出すことはできますが、今回のインドネシアのように火山噴火による山体崩壊の予測は不可能と言えるでしょう。まず基本となるのは迅速な避難です。





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南海トラフ地震の避難計画について

いつもブログをご覧いただき、ありがとうございます。南海トラフ地震は、M8~M9クラスの地震が30年以内に70~80%の確率で発生すると言われていますが、国の中央防災会議が前兆地震での避難計画についての報告書案をまとめました。今回はこのことについて取り上げたいと思います。1.これまでの経緯南海トラフ地震(南海・東南海・東海地震)は、これまでにも100年から150年周期で繰り返し発生してきました。直近の地震は1944年に昭...

いつもブログをご覧いただき、ありがとうございます。
南海トラフ地震は、M8~M9クラスの地震が30年以内に70~80%の確率で発生すると言われていますが、国の中央防災会議が前兆地震での避難計画についての報告書案をまとめました。今回はこのことについて取り上げたいと思います。

1.これまでの経緯
南海トラフ地震(南海・東南海・東海地震)は、これまでにも100年から150年周期で繰り返し発生してきました。直近の地震は1944年に昭和東南海地震、1946年に昭和南海地震が発生しており、東海地震の想定震源域は1854年の安政東海地震以来動いていませんでした。そのため将来必ず発生する東海地震を予知する目的で、24時間体制の観測体制が敷かれ、1978年には「大規模地震対策特別措置法(大震法)」が施行され、研究が続けられてきました。
もし異常な現象が捉えられた場合は、それが大規模な地震に結びつく前兆現象と関連するかどうかを緊急に判断するため、地震学研究者6名からなる地震防災対策強化地域判定会が開催され、データの検討が行われます。その結果、もうすぐ東海地震が起きそうだと気象庁長官が判断した場合、ただちにその旨を内閣総理大臣に「地震予知情報」として報告し、大震法に基づき「警戒宣言」を発令することになっていました。毎年9月1日の防災訓練では、この手順が行われているのをニュースで目にしていると思います。
東海地震だけではなく、南海・東南海・東海を含めた「南海トラフ地震」という考え方になったのは、2011年3月11日に発生した東日本大震災がきっかけです。この時は岩手県から茨城県までの南北500キロが震源域になり、広範囲で地震が連動するのを目の当たりにしました。東海地震が特別視されてきたのは、①震源が陸域に近く、地下の異常を捉えやすい ②1944~46年の南海トラフの地震の際に断層が動かず、ひずみがたまっている、などと考えられてきたためです。
しかし、この40年間で観測網が整備され研究が進むと、「地震予知は出来ない」との見方が逆に強まりました。予知が出来なければ警戒宣言は出せず、大震法の前提自体が崩れます。更に前回の南海地震から70年以上が経過し、東海地震単独ではなく、南海トラフ全域で起こる巨大地震を警戒する必要が出て来ました。これまで東海地震が単独で発生したことはなく、大震法見直しや広域での防災対策を求める声が高まり、2016年9月より新たな防災体制の議論が始まりました。

2.見直しの内容
見直しでは、大震法に基づく計画に代わり新たに南海トラフ沿いの広域で、事前避難などを含めた防災計画を策定することを求めました。
まず避難を開始する前提として「予兆」を捉えた場合ではなく、南海トラフのどこかで実際に地震が発生した場合を想定しました。南海トラフの地震は、これまで駿河湾から四国沖にかけて複数の震源が同時に、もしくは32時間後や2年後などの時間差で発生しています。このため、南海トラフの東側で大地震が起きてからの3日間程度は、「大規模地震の発生が特段に高い」として、被害がなかった西側沿岸部の住民も避難することを提案しました。4日目以降や、巨大地震よりも一回り小さい「前震」らしい地震が発生した場合は、高齢者や自力避難が困難な人は一週間ほど安全な場所に避難するとしました。
そして南海トラフの地震について、「臨時」と「定例」の2種類の情報が新たに発表されることになりました。臨時情報は、①南海トラフ沿いでM7以上の地震が発生するなどして、大規模地震と関連するか調査を開始・継続 ②大規模地震の可能性が高まった ③大規模地震の可能性が高くなくなった、場合にそれぞれ気象庁が発信します。

3.避難計画報告書案
当初は南海トラフのどこかで実際に地震が発生した場合の避難を想定しましたが、前兆となり得る現象が起きた場合、被災していなくても避難を始めるなど、住民や企業がとるべき防災対応が示されました。国は今後、対応をより具体化させた指針を作成し、自治体や企業には指針に基づく防災計画の策定を求めます。
前兆現象としては、①巨大地震の想定震源域のうち、東側か西側のどちらかをM8以上の地震が襲う「半割れ」②想定震源域の一部でM7以上の地震が起きる「一部割れ」③想定震源域で断層がずれ動く「ゆっくりすべり」の3つです。
前兆現象が起きた場合「臨時情報」が出されますが、①~③のいずれかに当たると評価された時には、最短2時間以内で2回目の発表が行われます。その上で、
①の場合:直近の2事例(昭和と安政)で東西が連動した地震が起きているので、揺れに襲われていない側でも、地震発生後の避難では津波到達までに逃げ切れない地域の住民と、逃げ切れない可能性のある地域の高齢者や障害者らのあらかじめの避難
②の場合:過去の事例から①ほど大地震が起きる可能性は高くないため自主避難を基本とし、期間は一週間程度
③の場合:避難を求めず、日常生活の中で警戒レベルを引き上げる
以上の3パターンに分けました。
企業は①、②とも原則的に事業は継続します。内閣府は年明け以降、自治体や企業が防災計画を策定するための指針作りを開始します。

4.事前避難の課題点
臨時情報が発表された際に、社会が混乱に陥る可能性があります。住民の不安や動揺を抑え、冷静な避難行動に結びつけるには、詳細な指針や防災計画の策定が不可欠ですが、まだまだその動きは始まったばかりです。
南海トラフ巨大地震は連動して動いているのも事実ですが、ほぼ同時に発生したり25時間後に発生した場合もあれば、直近の昭和南海地震と昭和東南海地震の時は2年間の間隔がありました。そのため一週間の避難も空振りに終わることもあり得ます。
そしてどこで一週間の避難生活を行うのか、その環境整備も求められます。特に高齢者や病人など、医療や介護が必要とされる方々もいらっしゃいます。その方々を収容できるだけのスペースがあるのか、避難期間中の体調管理はできるのか等、様々な問題が存在します。

内閣府は今年3月、巨大地震が発生時に3m以上の津波などが想定される29都道府県707市町村を対象にアンケート調査を行い、699市町村が回答。臨時情報発表後の避難勧告や避難指示などの発令について、165自治体(23.6%)が「検討の必要なし」と回答しました。その理由としては「予測の確度が高くない」「情報の内容がよくわからない」などが挙がりました。「検討の必要あり」は498自治体(71.2%)でしたが、避難勧告などを「既に検討している」としたのは36自治体で、全体の僅か5.2%でした。一方、「避難所を開設し、地震が発生しなかった場合の補助制度を整備してほしい」といった要望もありました。
「事前避難」と言うのは簡単ですが、実際に避難場所を開設し、そしてそこで住民達が生活するための食事を始めとする必需品も膨大な量、そして経費もかかります。検討を考えている自治体も、現実的な問題に直面し、前に進めないというのが実情だと思います。
南海トラフ巨大地震は必ず発生します。それが連動ではなく単発だとしても、必ず発生します。そして該当地域以外に居住する人々も、ひとたび大地震が発生すると、その後、数年~十数年の影響が及びます。行政を当てにするのではなく、私達一人一人が防災意識を高め、身の安全について考えていく必要があるのではないでしょうか。


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