カルデラ噴火について その2

いつもブログをご覧いただき、ありがとうございます。 前回は日本にあるカルデラについて紹介しました。今回は、実際にカルデラ噴火が起きたらどうなるか、過去の噴火事例から考えてみたいと思います。 1.超巨大噴火(カルデラ噴火)の発生の仕組み① マグマの蓄積超巨大噴火が発生するためには、地下に大量のマグマが蓄積されている必要があります。マグマ溜りの構造はまだ明らかになっていない場合もありますが、超巨大噴...
いつもブログをご覧いただき、ありがとうございます。

前回は日本にあるカルデラについて紹介しました。今回は、実際にカルデラ噴火が起きたらどうなるか、過去の噴火事例から考えてみたいと思います。

 

1.超巨大噴火(カルデラ噴火)の発生の仕組み

① マグマの蓄積

超巨大噴火が発生するためには、地下に大量のマグマが蓄積されている必要があります。マグマ溜りの構造はまだ明らかになっていない場合もありますが、超巨大噴火が発生する場所では、地下10キロメートルほどの所に薄い円盤状に広がっている場合が多いと考えられています。

② 噴火の開始

超巨大噴火を引き起こせるほどのマグマを蓄積した状態となった後、例えばマグマの圧力によって岩盤の弱い所が破壊されてマグマが地表に達するなど、何らかのきっかけによって噴火が始まります。そして複数の火口が出来、これらはマグマ溜りを縁取るような円周上に出来る場合が多いです。

③ 火口が繋がって円周上に

噴火が継続することで火口が拡大し、円周上の火口同士が連結し、ひとつながりの火口となります。火口からは噴煙が激しく噴出し、高度数十キロメートルまで到達します。火砕流が全方位に発生し、周囲を呑み込みます。火口が円周上に繋がって支えを失った岩盤は、陥没を始めます。

④ カルデラを形成

噴火は数時間から数日継続し、終息します。円周上の火口の内側は大きく陥没し、巨大なカルデラが形成されます。カルデラの直径は数十キロメートルにもおよぶことがあります。マグマの供給が続いていれば、マグマの蓄積がまた始まり、数万年から数十万年後には再び超巨大噴火が発生します。

 
 理科ネットワーク 火山噴火シュミレータ

  http://rika-net.com/contents/cp0300a/contents/K241.html

 

2.喜界カルデラ噴火

最も直近の7300年前に噴火した喜界カルデラは、九州最南端、大隅半島佐多岬のさらに南西50キロに位置している25×15キロの規模の海底カルデラで、最深部は水深500mにも達しています。現在ある薩摩硫黄島、新硫黄島、竹島は、喜界カルデラの北縁にあたり、カルデラの北の縁がかろうじて海面に顔を出していた部分です。

この噴火によって発生した火砕流は、海を渡って50km先の鹿児島県南部を埋め尽くしました。火砕流は高温の火山ガスと混合一体化しているため地面との摩擦が少なく、100km/時を超えるスピードで一気に遠くまで流れます。またガス成分が多い場合は比重が小さいため、海面上を滑走することもあります。この時の噴火では、9500年も前から始まっていた独自に発達した日本最古の縄文定住集落が、火砕流により壊滅してしまいました。当時の人々は、沖合に突如湧き上がった巨大なキノコ雲に、「何だろう?」と思う間もなく襲われてしまったことでしょう。

この噴火で降り積もった火山灰は濃いオレンジ色が特徴の「アカホヤ火山灰」と呼ばれ、南九州では50cmを超える厚さの火山灰で覆われました。そして四国や紀伊半島は厚さ20cmを超える灰白色の火山灰で一面を覆われ、遠く離れた関東地方にも厚さ数センチの火山灰を降らせました。西日本の森林は枯れ果て、食料の大半を森林に頼っていた西日本の縄文人は飢餓に陥り、その上、有毒な火山灰による呼吸器障害に見舞われ、数週間のうちに多くが死滅しました。そして喜界カルデラからの超巨大噴火後、南九州では900年あまりもの間、豊かな照葉樹林の森は復活せず、人が住めない無人の地となっていたようです。

カルデラ噴火が研究され始めた現在、喜界カルデラの観測航海が行われました。その結果、高さ600mの巨大な溶岩ドームが海底に形成されており、熱水と共に火山性ガスが噴き出す、現在も活動している活火山ということが判明しました。

 
 産経ニュース  2017. 3.31

  http://www.sankei.com/photo/daily/news/170331/dly1703310015-n1.html

 

3.姶良カルデラ噴火

喜界カルデラ噴火より更に巨大な噴火だったのは、29000年前に噴火した姶良カルデラです。この時の噴火は、現在の桜島火山付近で生じた大規模なプリニー式噴火で始まりました。火山灰は九州で50cm以上、近畿地方や名古屋で20cm以上、関東地方でも10cm以上、東北地方の仙台でも5cm以上降り積もりました。マグマの噴出量は150立方キロで、1991年のフィリピン・ピナツボ火山の噴火5立方キロの30倍以上の規模になります。琵琶湖の貯水量が30立方キロ弱なので、琵琶湖5杯分のマグマが噴出したことになり、ちょっと想像力が追い付きません。

姶良カルデラ周辺には、軽石を含む真っ白な火山灰のシラス台地が発達しています。この台地は崩れやすく、集中豪雨などがあるとしばしば崖崩れ災害を起こします。シラス台地の厚さは100mを超える場合もまれではありません。この台地を生み出したのが、姶良カルデラから噴出した入戸火砕流です。火砕流は鹿児島県全域に広がっています。

神奈川県の丹沢山地では、大量の富士火山起源の黒色の降下スコリア堆積物が見られますが、その中に白色火山灰層が挟まっています。その厚さは13cm余りあり、それほど遠くない火山由来だと思われていました。ところが、その後の研究でこの火山灰層が1000kmあまりも離れた南九州の姶良カルデラ起源であることが判明し、「姶良丹沢火山灰」略して「AT火山灰」と命名されました。AT火山灰は入戸火砕流が噴出した際、成層圏まで噴き上がった巨大なキノコ雲からもたらされたものです。もし現在、当時の規模の火砕流が姶良カルデラから噴出したら、170万人近い鹿児島県の住人のほとんどが“瞬殺”になってしまいます。

 
 みんなの桜島

  http://www.sakurajima.gr.jp/sakurajima/001323.html

 

4.阿蘇カルデラ噴火

この姶良カルデラ噴火より更に巨大な噴火を起こしたのが、阿蘇カルデラです。このカルデラは約27万年前、14万年前、12万年前、9万年前の、4回の巨大噴火によって形成されてきたものです。その中で最大規模の噴火が、阿蘇4噴火と呼ばれる最も新しい噴火です。マグマ噴出総量は約1000立方キロで、阿蘇火山最大の噴火であるのみならず、第四紀と呼ばれる過去約260万年間に日本列島で起こった最大規模の噴火にもなります。

この噴火では2度の大規模な火砕流が発生し、200km以上の距離まで到達し、九州のほぼ全域から山口県、天草諸島に至る広大な範囲が一瞬にして焼き尽くされました。現在の人口でいうと1100万人近い人々が居住する地域が、火砕流によって覆われてしまったことになります。そして火砕流の噴出時には、巨大な噴煙が数万メートルの高さの成層圏にまで到達し、火山灰を降らす噴煙が日本列島全体を覆いました。火山灰の規模は姶良カルデラが噴火した際のAT火山灰を遥かに超えており、津軽海峡を越えて北海道でも15cm以上も降り積もりました。九州から北海道まで、日本列島全体が15cmを超える厚い火山灰で覆われてしまったわけで、完全なる「日本埋没」の規模でした。


  阿蘇火山博物館 阿蘇について

  http://www.asomuse.jp/aboutaso/

   阿蘇火砕流

  http://sakura1.higo.ed.jp/ws/kchigaku/hp/aso/zu/kasai.htm

 

5.もし巨大カルデラ噴火が起きたら

巨大カルデラ噴火は、途轍もないマグマが一気に噴出します。カルデラは北海道と九州に集中していますが、日本列島全体に大きな影響を及ぼすのは九州にあるカルデラが噴火した場合です。火山灰が偏西風で東へ運ばれ、日本列島全体を覆う可能性があるからです。

まず最初のプリニー式噴火によって、九州中部では場所によっては数メートルもの軽石が降り積もって壊滅的な状況に陥ります。そしてクライマックス噴火が始まると巨大な噴煙柱が崩落して火砕流が発生し、全方位へと広がって行きます。数百℃以上の高温の火砕流は全てのものを飲み込み、そして焼き尽くし、発生後2時間以内に700万人の人々が暮らす領域を覆い尽くしてしまいます。

九州が焼き尽くされた後、中国・四国一帯では大量の火山灰が降り注ぎます。そして降灰域はどんどん東へ広がり、噴火開始の翌日には近畿地方へ達します。大阪では火山灰の厚さは50cmを超え、木造家屋の半数近くは倒壊します。その後、首都圏でも20cm、青森でも10cmもの火山灰が積もり、北海道東部と沖縄を除く全国のライフラインは完全に停止します。


火山灰による影響

① 交 通 

 道 路:5cm以上で通行不能

 鉄 道:10cm以上で通行不能

 航 空:0.5cm以上で空港閉鎖

② ライフライン

 電 力:1cm以上で供給不能(停電)

 水 道:1cm以上で供給不能(断水)

③ 農 林

 農作物:2cm以上で収穫不能、10cmで回復に数十年

 森 林:1cm50%被害、10cmで破滅的被害

④ 生 活

 健 康:1cm以上で呼吸器障害

 家 屋:50cm(降雨時は30cm)30%以上全壊


巨大カルデラ噴火の発生による直接的な被害者は、火砕流と降灰合わせて1000万人程度と考えられます。しかし水道は給水不能、発電も不可能、国内ほぼ全ての交通網はストップし、生活不能に陥った人達に対する救援・復旧活動も絶望的になります。救援活動が殆ど不可能な状態では、1億人以上が命を落とすこともあり得ます。

 
 YAHOO
ニュース 巨大カルデラ噴火 神戸大学教授・巽 好幸

  https://news.yahoo.co.jp/byline/tatsumiyoshiyuki/20170511-00070808/


 
2014年に鹿児島県の川内原発の再稼働が決定した際、原子力規制委員会の委員長は、川内原発の安全性レベルについて「世界最高レベル」と評価しました。噴火についても事前に予測ができるため、燃料棒の取り出しが出来るから安全とも述べています。また噴火した際の火砕流も原発を避けるという不可解な予測になっていました。それに対して火山学者は「噴火の予測は不可能」と強く主張しています。このような背景で稼働再開になりましたが、実はこの時「もしカルデラ噴火が起きたら12000万人が亡くなるので、燃料棒を取り出していようがいまいが関係ない」という発言も委員長からありました・・・。

 
 日本火山の会 画像でたどる死都日本

  http://www.kazan-net.jp/shitowww/index.html







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カルデラ噴火について その1

いつもブログをご覧いただき、ありがとうございます。現在、比嘉良丸氏に伝えられている啓示で、10月末までに起きる可能性のある自然災害についての話がありました。その中で最悪の出来事は、北海道の屈斜路カルデラや九州の薩摩硫黄島の大噴火、もしここが動くとM11クラスの大災害であり、生命の絶滅になると伝えられました。今回は屈斜路カルデラや薩摩硫黄島がある鬼界カルデラ、このカルデラが噴火することによる超巨大噴火に...
いつもブログをご覧いただき、ありがとうございます。
現在、比嘉良丸氏に伝えられている啓示で、10月末までに起きる可能性のある自然災害についての話がありました。その中で最悪の出来事は、北海道の屈斜路カルデラや九州の薩摩硫黄島の大噴火、もしここが動くとM11クラスの大災害であり、生命の絶滅になると伝えられました。今回は屈斜路カルデラや薩摩硫黄島がある鬼界カルデラ、このカルデラが噴火することによる超巨大噴火について書きたいと思います。

1.火山噴火の大きさ
地震のエネルギーを示すものにマグニチュード(M)という指標がありますが、火山噴火も同様に火山爆発指数(VEI)というものがあります。これは火山そのものの大きさではなく、爆発規模の大きさを示す区分になります。噴出物の量で区分され、0~8までの段階に分けられており、VEIの値が1上がるごとに噴出物の量は10倍になります。
ウィキペディア 火山爆発指数

この分類によると、1707年の富士山の宝永噴火はVEI5の巨大噴火、969年の白頭山(長白山)噴火はVEI6、9万年前の阿蘇カルデラ噴火、約2万年前の姶良カルデラ噴火、7300年前の鬼界カルデラ噴火は超巨大噴火のVEI7に分類されています。
一方、群馬大学の早川由紀夫氏は、噴火マグニチュードという指標を提唱しています。これは噴出したマグマの総量を重量で表して、その対数で噴火規模を表現したものですが、専門家にとっては扱いやすい数字の表現ですが、一般向けに使うのは難しいようです。VEI7に分類された鬼界カルデラ噴火はM8.1、姶良カルデラ噴火はM8.3、阿蘇カルデラ噴火はM8.4に分類されています。最近ではM7以上のものを、巨大カルデラ噴火と呼ぶことが多いようです。
早川由紀夫 噴火データベース
  http://www.hayakawayukio.jp/database/index.php?kind=2k&mode=


2.カルデラとは
「カルデラ」という言葉は、スペイン語の「大釜」という言葉に由来し、火山活動で生じた大きな凹地のことを表し、日本ではその直径が2km以上の大きさのものを「カルデラ」と呼んでいます。大型カルデラは、大量のマグマが一度に噴出したことで地下のマグマ溜りに空洞が生じ、そのためにマグマ溜りの天井部分が崩壊して、直上の地表部分が大規模に陥没するために形成されます。
カルデラ噴火の起き方

3.11以降、富士山の噴火が懸念されています。この富士山を始めとして、噴火活動が活発な桜島や、2014年に突然噴火した御嶽山など、日本には多くの火山があります。これらの火山の噴火は「山体噴火」と呼ばれます。そして噴火の間隔も比較的短く、300年噴火していない富士山も、江戸時代に噴火した時の瓦版や見聞録等の資料も残されています。それに対して「カルデラ噴火」というのは噴火の間隔が非常に長く、前回噴火したのが何万年も前になり、地質を調べることにより噴火の痕跡がわかるというものです。そのため噴火の確率も1万年に1回になり、もし噴火が発生したら1億人近くが命を落とすと言われても、ピンと来ないのが現実です。火山学者も巨大カルデラの存在はわかっていますが、あまり研究されてはいませんでした。
しかし、石黒耀・著『死都日本』という小説が2002年に出版されてから、カルデラ噴火が注目されるようになってきました。九州の霧島火山の下には30万年前以上に活動した加久藤カルデラや小林カルデラがありますが、この小説は霧島火山がついに「超巨大噴火」を起こしたというものです。避難勧告地域は、北は熊本県の人吉市、南は鹿児島市、東は宮崎県都城市、西は鹿児島県菱刈町にわたる、大阪府に匹敵する1800平方キロの面積、住民人口は110万人にも及ぶものでした。そして霧島火山が大噴火した1時間余り後には、これらの地域は全て火砕流に呑み込まれてしまいます。そして成層圏まで到達した噴煙により、日本列島の主要部分が火山灰の下に隠れてしまい・・・詳しくは同書をご一読下さい。なお「破局噴火」という言葉は、この小説で作られた言葉です。

3.日本列島にあるカルデラ
巨大カルデラを形成する「超巨大噴火」は、数万年から数十万年といったきわめて長い間隔をおいて噴火を繰り返します。巨大なカルデラが存在するということは、はるか大昔に、そこから数百万立方キロにも及ぶ大量のマグマが噴出して、地下空洞が出来たことを意味しています。過去12万年の間に、M7以上の巨大カルデラ噴火が少なくとも10回は発生したことが確認されています。
日本列島には北海道から東北地方北部にかけてと九州地方に集中してカルデラが存在します。
① 摩周カルデラ
摩周火山は屈斜路カルデラの東壁上に1万数千年前以降に形成され、7000年前に大規模な噴火を起こし、約6×8キロの現在の摩周カルデラが生じました。摩周カルデラの東壁上には、カムイヌプリ火山が噴出しています。
② 屈斜路カルデラ
屈斜路カルデラは28×20キロの大きさを持つほぼ円形のカルデラで、日本列島最大のカルデラです。4万年前(M7.0)及び11万7千年前(M7.4)の2回の巨大噴火で現在の地形が出来上がりましたが、その火山活動の始まりは約34万年前に遡ります。環状に分布する中央火口丘には、活発な噴気活動を続けるアトサヌプリ火山と中島火山があり、特徴的な形状になっています。
③ 支笏カルデラ
支笏カルデラは、直径12キロほどの大きさで、今から6万年前と4万1千年前(M7超え)の噴火によって形成されました。カルデラ内には、北西部に恵庭火山、南東部に風不死火山と樽前火山があります。支笏カルデラは北海道の中心地である札幌からわずか40キロの場所に位置しています。もし4万年前と同じ規模の超巨大噴火を起こした場合は、苫小牧、千歳、恵庭、北広島、札幌などの諸都市が火砕流によって壊滅することになり、その被害は人口にして230万人にも及びます。
④ 洞爺カルデラ
洞爺カルデラは直径約10キロのほぼ円形をしたカルデラで、約11万年前に大規模な噴火(M7.4)が起こり、火山灰が東北・北海道のほぼ全域を覆いました。およそ5万年前と2万年前にカルデラの中央に溶岩ドームが作られ、現在は中島火山と呼ばれています。また1万年前には南西壁に有珠火山が誕生しました。有珠火山は日本列島で最も活動的な活火山の一つで、江戸時代以降も頻繁に噴火を繰り返しており、最近は2000年の噴火が記憶に新しいところとなっています。
気象庁 北海道の活火山
⑤ 十和田カルデラ
十和田カルデラは青森県と秋田県の県境に位置しています。十和田カルデラは二重式のカルデラで、直径9キロのカルデラに中央火口丘である五色岩火山があり、さらにその中央部に直径3キロほどの中ノ湖カルデラがあります。これまで激しい噴火を繰り返して来ており、最新の噴火は10世紀初めの平安時代中期に起きました。噴火の総噴出量は約7立方キロであり、最近1100年間の日本列島では最も大きな噴火でした。この規模の噴火が現在起これば、秋田県北部や青森県東部を中心に、相当な被害が生じるものと思われます。
気象庁 十和田
⑥ 阿蘇カルデラ
阿蘇カルデラは18×25キロのカルデラで、九州にあるカルデラの中で最大のものになります。約27万年前、14万年前、12万年前、9万年前の、4回の巨大噴火によって形成されてきたものです。その中で最大規模の噴火が、M8.4の阿蘇4噴火と呼ばれる最も新しい噴火です。この時の噴火の火山灰は日本列島全域を覆い、北海道でも15cm余りも降り積もりました。現在、阿蘇カルデラ内には、5万人近い人々が生活しています。
気象庁 阿蘇山
⑦ 姶良カルデラ
2万9千年前に超巨大噴火を起こした姶良カルデラは、24×20キロの大きさで鹿児島の錦江湾の最奥部を構成しています。この時の噴火での火山灰は、関東地方の丹沢でも発見されています。ここは現在もマグマが溜まり続けている活動中のカルデラで、そのマグマは桜島火山に供給され、活発な噴火を繰り返しています。
気象庁 桜島
⑧ 鬼界カルデラ
九州最南端、大隅半島佐多岬のさらに南西50キロに位置する鬼界カルデラは、25×15キロの規模の海底カルデラで、最深部は水深500mにも達しています。北西縁部には薩摩硫黄島、新硫黄島、竹島があり、活発な火山活動を続けています。このカルデラは約15万年前と9万2千年前、そして7300年前に噴火しています。特に7300年前のアカホヤ噴火と呼ばれる超巨大海底噴火では、南九州の縄文人が全滅しました。この時の火山灰は東北地方にまで達し、海上を走った火砕流は九州南部を直撃しました。
気象庁 薩摩硫黄島
巨大カルデラ噴火と通常の火山噴火の違いは、その規模にあります。M7以上の巨大カルデラ噴火では、琵琶湖1.5杯分ものマグマを一気に吹き出し、その噴煙は数十kmにまで達し、数百km離れた所にまで火山灰をもたらすこともあります。また成層圏を漂う火山灰や、火山ガスに含まれる硫酸エアロゾルが太陽光を遮り、「火山の冬」と呼ばれ地球全体が寒冷化することもあります。ひとたび巨大カルデラ噴火が起これば、日本という国が存在しなくなるだけではなく、地球全体へその影響が及びます。
次回は、実際にカルデラ噴火が発生したらどうなるか、そして現在の状況を紹介したいと思います。






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平成29年7月九州北部豪雨について

いつもブログをご覧いただき、ありがとうございます。7月5日に福岡県朝倉市と大分県日田市を中心に、豪雨災害が発生しました。被害に遭われた方々には、心よりお見舞い申し上げます。今回は、この豪雨災害について取り上げたいと思います。1.豪雨の経緯7月4日まで北陸付近にあった梅雨前線が西日本付近に南下、5日朝方島根県西部で発達した積乱雲が帯状に連なる「線状降水帯」が発生し、記録的な降水となりました。島根県浜田市...
いつもブログをご覧いただき、ありがとうございます。
7月5日に福岡県朝倉市と大分県日田市を中心に、豪雨災害が発生しました。被害に遭われた方々には、心よりお見舞い申し上げます。今回は、この豪雨災害について取り上げたいと思います。

1.豪雨の経緯
7月4日まで北陸付近にあった梅雨前線が西日本付近に南下、5日朝方島根県西部で発達した積乱雲が帯状に連なる「線状降水帯」が発生し、記録的な降水となりました。島根県浜田市、益田市、邑南町、津和野町に大雨特別警報が発表されました。
この前線が同日昼頃までに、九州の北側まで南下。そこに南西の東シナ海から暖かく湿った空気が流れ込み、この空気が脊振山地の南北を回り込むようにして動き、山地の東端でぶつかって上昇、大雨を降らせる積乱雲が次々に発生しました。雨の元になる水蒸気量は海面水温に左右されますが、7月に入り海面水温が平年より1~2度高くなっていたことも被害を拡大させました。
特に被害が大きかった福岡県朝倉市では、次々にできた線状降水帯が長時間同じ場所に停滞し、局所的な大雨になりました。長さ数十キロ、幅10キロ未満の線状降水帯が4つも発生し、長時間維持されただけでなく、一つ一つの積乱雲が非常に活動的でした。
朝倉市では1時間雨量が130mm近くに達しました。6日午前までに降った24時間雨量も、平年の7月の月間雨量を上回る約540mmで、観測史上1位を更新しました。大分県日田市でも24時間雨量が370mmとなり、観測史上1位を更新しました。人は80nnを超える雨量で、圧迫感や恐怖感を覚えます。想像を絶する猛烈な雨が、長時間降ったことがうかがえます。
茨城新聞 防災科学技術研究所ゲリラ豪雨再現実験
  https://www.youtube.com/watch?v=7FrQ7-wk5P4

2.気象庁や自治体の対応
今回大きな被害を受けた九州北部は、2012年にも「九州北部豪雨」で被災しています。5年前にも大きな被害を受けた朝倉市では、災害時の対応を定めたマニュアルに従い、雨脚が強まった5日午後2時26分に災害対策本部を設置し、市全域に避難勧告を発令しました。観測史上最大の1時間雨量129.5mmを記録した同3時半頃には、避難勧告を避難指示に順次切り替えました。その後も避難所の受け入れ準備を進めましたが、雨の勢いが想定を上回り、全域に避難指示を出したのは気象庁が同5時51分に大雨特別警報を出した後の同7時10分でした。市の対応はマニュアル通りに行われましたが、人的被害は防げませんでした。
大分県日田市では、雨量や河川水位のデータなどを基に避難指示を出すかどうかを判断。同7時55分の大雨特別警報までに、全世帯の約3割に避難指示を出しました。それでも川の氾濫などで複数の集落が孤立。雨量や川の増水の速さが予想を上回ったためで、避難の呼びかけのタイミングが重要になりました。
「数十年に一度の重大な災害」の恐れがある場合に気象庁が発表する大雨特別警報が福岡県と大分県に出されたのは、既に大雨のピークを過ぎた後のことでした。朝倉市に特別警報が出たのは、1時間当たり最大雨量が記録されてから2時間以上経過した時で、すでに雨脚はやや弱まっていました。大分県日田市も同様で、1時間雨量が最大となった1時間以上後のことでした。
気象庁の主任予報官は、特別警報の目安となる「数十年に一度の重大な災害」にあたるか判断が難しかったと説明しています。今回、雨を降らせた「線状降水帯」は予測するのが難しく、空振りも懸念されたとのことです。大雨警報は出していましたが、特別警報を出した時には結果的に雨のピークが過ぎていました。
*豪雨に対しての対応
午前11時 4分  大分県日田市に大雨警報を発表
午後
 1時14分  福岡県朝倉市に大雨警報を発表
   2時26分  朝倉市が災害対策本部を設置
   3時26分  日田市が災害対策本部を設置
   3時38分  朝倉市で129.5mmの1時間雨量を記録
   5時51分  朝倉市に大雨特別警報を発表
   6時44分  日田市で87.5mmの1時間雨量を記録
   6時45分  日田市が一部地区に避難指示
   7時10分  朝倉市が全域に避難指示
   7時55分  日田市に大雨特別警報を発表
気象庁 特別警報発表基準
  http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/tokubetsu-keiho/kizyun.html

3.今回の災害で考えるべきこと
(1) 避難のタイミング
地震と異なり大雨の場合は事前にある程度の予測が可能ですが、最近の水害では雨が短時間に集中して降ることが多く、避難の迅速な呼びかけが課題となっています。今回も朝倉市では全域に避難指示が出たのは、雨のピークを過ぎた後でした。
住民は避難指示・勧告だけに頼らず、主体的に避難を判断することが大切です。特に増水の恐れがある川の近くに住んでいる住民は早目の避難を心掛けるなど、家屋の立地条件や家族構成なども考慮して行動することが求められます。また今回は避難指示が出たのが夜7時を過ぎており、暗い中での避難は危険が伴います。暗いために動けずに自宅にとどまり、被害に遭われた方もいらっしゃいました。
(2) 避難場所
今回の豪雨で最大規模の土砂崩れが発生した日田市の小野地区の斜面は、「土砂災害危険箇所」の指定区域外でした。これは国が定めた斜面の傾斜や高さ、民家などの基準に基づいて都道府県が調査・公表し、市町村のハザードマップにも反映されます。しかし土砂崩れが起きた地域は、市のハザードマップの危険箇所に挟まれた空白域でした。そのため付近を見回り中だった消防団員が巻き込まれてしまいました。斜面の近くに住む人は、危険箇所の区域外でも土砂崩れの危険があると認識し、早目の避難行動をとることが大切になります。
逆に早目の避難を行った住民が、避難所の指定ではない市の施設に集まり、そのまま避難所になった建物がありました。しかし河川の氾濫により、その地域は孤立してしまいました。早目早目に行動しても時として厳しい状況がありますが、命を守ることは出来ました。
(3) 連絡手段の欠如
大雨による電線の切断、落雷による停電等により、防災無線が使えなくなっていた地域がありました。またラジオの電波も入らない地域もあり、状況が全く把握できない住民の方々もおられました。
河川の整備等のハード面の対策も大切ですが、今後は連絡手段をどうするかなどの新たな課題も浮かび上がってきています。

九州北部豪雨災害から二週間が経過しました。亡くなられた方が34人、未だに行方が分からない方が7人いらっしゃいます。避難所に身を寄せておられる方は、福岡・大分両県で882人になります。仮設住宅の建設も始まりましたが、日常生活を取り戻すにはまだまだ時間がかかります。この地域は2012年にも大きな豪雨災害を受けたのをもとに対策に取り組んできましたが、それでも人的被害が出てしまいました。
自然の動きは人間の想像を超えます。想定外の被害を招かないための対策を行うことは、実際には不可能です。線状降水帯は6~8月に発生しやすく、九州以外の地域でも急な大雨に見舞われる恐れがあります。各自がイザという時の意識を持ち普段から備えておくことが、命を守ることにつながります。
日本気象協会 朝倉市現地調査
  https://tokusuru-bosai.jp/try/try06.html









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「大避難」について 広域避難編

いつもブログをご覧いただき、ありがとうございます。前回は自然災害のうち雨による災害、特にスーパー台風が上陸したらどうなるかのシミュレーションを紹介しました。今回はこのような場合の避難について考えてみたいと思います。1.避難情報台風や大雨などは、事前にある程度の規模や進路が予測できます。それにより「大雨警報」や「洪水警報」「土砂災害警戒情報」といった気象情報が発表され、それに基づいて自治体からの避難...
いつもブログをご覧いただき、ありがとうございます。
前回は自然災害のうち雨による災害、特にスーパー台風が上陸したらどうなるかのシミュレーションを紹介しました。今回はこのような場合の避難について考えてみたいと思います。

1.避難情報
台風や大雨などは、事前にある程度の規模や進路が予測できます。それにより「大雨警報」や「洪水警報」「土砂災害警戒情報」といった気象情報が発表され、それに基づいて自治体からの避難の呼びかけが行われます。
避難については緊急性が高いものから「避難指示」「避難勧告」「避難準備情報」の3種類があります。しかしその内容がわかりづらく、特に「避難準備情報」は避難するための準備を開始するという理解をしている方も多く、昨年の台風10号ではグループホームに入居していた高齢者9人が犠牲になってしまいました。「避難準備情報」は高齢者や自力では避難出来ない方達が避難を開始するという意味ですが、施設側がその意味を誤解していたことにより避難が間に合いませんでした。
この台風10号の被害を受けて内閣府は2016年12月26日、自治体が発令する「避難準備情報」の名称を「避難準備・高齢者等避難開始」に変更し、全国の自治体に新名称を使うように通知しました。また「避難指示」についても危険が差し迫っている状況をより強調するために「避難指示(緊急)」という表記に改めました。しかしいくら名称を変えたとしても、実際に行動に移すのは一人一人の意識の持ち方が重要になってきます。
内閣府 避難準備情報の名称の変更について
 
 http://www.bousai.go.jp/oukyu/hinankankoku/hinanjumbijoho/index.html

2.避難開始の目安
気象庁からの情報に基づき、各自治体が避難の呼びかけを行います。自治体ごとに避難計画を策定しているので、皆さんのお住まいの地域の自治体HPを確認してみて下さい。
しかし、2015年の茨城県常総市の鬼怒川決壊だけではなく、広島市の土砂災害や伊豆大島の土砂災害など、大きな被害が発生している水害では避難勧告や指示が間に合っていないという状況が起きています。2014年の広島市の土砂災害の後に内閣府が行った自治体へのアンケート調査では、土砂災害が発生した際、事前に避難勧告や避難指示を出していたのは全体の6割弱の自治体で、多くは住民からの問い合わせの対応で手一杯だったり、急激に激しさを増す雨に対して準備が追い付いていなかったりという状況でした。特に夜間の場合、宿直の職員しかいないため更に手が足りません。伊豆大島の災害では、事前に気象庁からの連絡が入っていたにも関わらず、職員が帰宅してしまいました。
避難の呼びかけが遅れる自治体が相次いだことを受け、内閣府は2014年と15年に、自治体が避難勧告や指示を出す際の目安や心構えを定めた「避難勧告等の判断・伝達マニュアル作成ガイドライン」を改訂しました。特に「(雨量による)予想で土砂災害警戒情報の基準に達した場合には避難勧告を発令し、実況で土砂災害警戒情報の基準に達した場合には避難指示を発令する」という、基準に達したら躊躇せず、空振りを恐れずに速やかに避難勧告・指示を出すようにという流れになりました。そのため最近では自治体の避難の呼びかけが速やかに、かつ広範囲に出るようになっています。
2014年7月~10月までの間で、大雨などの気象災害に対して出された避難勧告・指示は、対象となる人数はのべ1073万9500人にも上ります。同じ自治体で避難勧告、その後に指示が出されたものも含まれますが、国民の11人に1人に対して発令された形になります。避難する私達も、「なんだ、何事もなかったじゃないか」と行政に文句を言うのではなく、「何事もなくて良かった」という意識を持ちたいと思います。

3.避難開始
実際に避難開始になると、指定されている避難場所へ移動します。しかし実際にどこへ逃げればいいでしょうか?
海抜ゼロメートル地帯では避難場所の多くが水没の危険性があり、そこへ避難することは出来ません。早目に避難していても、台風の接近に伴い雨量が多くなり、河川水量の増加、越流などにより別の場所への再度の避難になってしまいます。そうなるとより風雨が激しくなっており、その中での移動は危険性も高くなります。
それぞれの自治体にはきちんとした防災計画があり、避難勧告や指示を出す基準が決められています。その決定を行うのが各自治体の首長になりますが、場合によっては自治体ごとでの発令がばらばらになることも考えられます。また近年は堤防も整備されて災害も減っているため、地域住民も水害に対しては実感がなく、その備えが殆ど行われていない地域もあります。避難訓練も地震を想定した訓練ばかりです。水害の経験がないため「荒川が切れても大丈夫」という意識を持っている住民もいます。
高潮が流れ込んだ地域は、台風が過ぎ去っても水に浸かったままです。前回のスーパー台風のシミュレーションを例に挙げると、命の危険にさらされている人は20万人もおり、さらに区内の高い場所や建物などに避難した人の数は137万人にものぼります。この方々を区外に移すための救出活動や、救出されるまでの間は物資を渡す必要があります。電気・ガス・水道というライフラインが途絶している可能性も高い中、極めて厳しい生活環境を強いられます。またシミュレーションでは、避難勧告の段階で住民が一斉に避難したらどうなるかというケースも算定しました。その結果は、区外に脱出できる住民はバラバラに避難するよりも更に減り、44万3000人が命の危険にさらされるという更に悪い結果になりました。かつて国土交通省が試算した結果によると、排水のためのポンプを各地から集めて対応しても、排水には2週間以上かかるとの結果が出ました。病気の人への対応などもかなりの困難が伴います。そこで必要なのが「広域避難」です。

4.広域避難への取り組み
2015年の鬼怒川決壊の水害を受けて、国土交通省は国が管理する109水系のおよそ400の河川について、最大規模の洪水を考慮した浸水想定を開始しました。またこのシミュレーション結果を受けて、足立区・江戸川区・江東区・葛飾区・墨田区の江東5区が「大規模水害対策協議会」を発足させました。これは大規模水害の恐れがある場合は、共同検討における判断に基づいて区民に対して大規模水害の可能性を伝えるとともに、全ての人を対象に自主的な広域避難の実施を呼びかけることで、早い段階で区民の主体的な避難行動を促します。またさらなる広域避難の実効性を高める為に、大規模水害が発生する概ね一日前に「広域避難勧告」を発表することを目指して、江東5区が連携して広域避難に関する具体化を図っていくものです。
気象災害は「リードタイム」、すなわち雨や風が強くなってから災害が発生するまでに時間があり、避難勧告のタイミングが難しい場合があります。しかし逆に考えれば、地震と異なり突然発生する災害ではないので、避難準備の時間を確保することができます。災害が起きる前から逆算して対策をとるという考え方を「タイムライン」といいます。台風の場合、発生してから上陸するまでの数日間を使うことができ、この間に各自のタイムラインに沿って行動します。しかし行政は、①避難勧告のタイミングをどうするか、②避難先と手段をどうするか、③現実的な対応策を打ちだせるか、という課題に直面しています。
江東5区が具体的に想定した避難の流れは
【災害発生3日前】
5区の職員が集まり検討を開始し、区民に大規模水害の発生や広域避難呼びかける可能性があることを伝える。そしてすべての区民を対象に「自主広域避難の呼びかけ」を行う。
【災害発生1日前】
5区の区長が合同で「広域避難勧告」を発表する。そして公共交通機関を利用した避難を呼びかける。
【災害発生12時間前】
「避難準備情報」を発表。広域避難が難しい要支援者に、ビルの上などに設けた避難所への避難を呼びかける。
【災害発生6時間前】
台風による暴風雨で公共交通機関が止まった場合は広域避難を止め、「避難勧告」を発表して区内にある高層建物の上の階への垂直避難をするように求める。
【災害発生数時間前】
「避難指示」を発表し、速やかに命を守るための行動を求める。
具体的に区外のどこへ避難するのかなど、実効性のある計画になるのはこれからですが、確かな一歩は踏み出しました。
葛飾区 江東5区大規模災害対策協議会の検討結果
  
 http://www.city.katsushika.lg.jp/kurashi/1000063/1004031/1012226.html
江東区 江東5区大規模水害避難等対応方針
 http://www.city.koto.lg.jp/057101/bosai/bosai-top/topics/topics_0072.html
江戸川区 江東5区大規模災害対策協議会~犠牲者ゼロの実現に向けて~
 https://www.city.edogawa.tokyo.jp/bousai/koto5_daikibo_suigai.html
荒川に面する埼玉県戸田市も、上流側・下流側のどちらで決壊が起きても全市が水に浸かる問題を抱えています。浸水の高さは最大4mにもなり、広域避難が必要になってきます。そこで戸田市に隣接するさいたま市浦和区や南区の高台にある小・中学校に戸田市民も避難できる取り決めがなされました。住民側も具体的な避難場所がわかることにより、安心感を持つことが出来ます。このように少しずつですが、各地で広域避難計画が具体化しつつあります。
戸田市 水害犠牲者ゼロのまちづくり
  
 http://dsel.ce.gunma-u.ac.jp/toda_ws/cont-30.html

梅雨入りした現在、東日本ではまだあまり雨量はありませんが、いつ大雨になり、避難が必要になるかわかりません。筆者が住んでいる地域では雨はまだ少ないですが、既に2回も竜巻注意報が発令されました。しかも一度は朝の4時でした。幸いにも竜巻の発生はありませんでしたが、「また空振りだろう」と捉えるのではなく、発令されたら注意力を高めにしておきたいと思います。
皆さんのお住まいの地域や仕事先、日頃からよく行く地域など、周囲の状況の確認を今一度行って、イザという時に備えていただきたいと思います。


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「大避難について」気象編

いつもブログをご覧いただき、ありがとうございます。近年、集中豪雨や台風被害の激甚化が進んできています。地震や津波に対しても、これまでの想定を上回る規模の災害が起こる可能性が浮かんできています。2016年に栃木県と茨城県の鬼怒川で豪雨災害が発生しましたが、私達の暮らしを守る堤防などのインフラの強度を上回る災害が発生してきています。このような大災害が現代の都市でひとたび起きると、数十万人規模の人々が一斉に...
いつもブログをご覧いただき、ありがとうございます。
近年、集中豪雨や台風被害の激甚化が進んできています。地震や津波に対しても、これまでの想定を上回る規模の災害が起こる可能性が浮かんできています。2016年に栃木県と茨城県の鬼怒川で豪雨災害が発生しましたが、私達の暮らしを守る堤防などのインフラの強度を上回る災害が発生してきています。このような大災害が現代の都市でひとたび起きると、数十万人規模の人々が一斉に避難を迫られる事態が起こり得ます。これが「大避難」です。しかも最新の科学的分析から、もし現代の都市で大避難を必要とする災害が起きた場合、避難そのものが困難になったり、予期せぬ混乱が起こったりすることがわかってきました。今回からこの「大避難」について考えてみたいと思います。

1.災害情報について
避難を呼びかける前提には、各種の災害情報があります。近年は技術の進歩に伴い、その情報の質・量ともに豊富になり、更に新たな災害が起こるたびに情報の種類が増加しています。ここでは 気象分野における災害情報を紹介します。
(1) 天候関係
 注意報:大雨、洪水、強風、風雪、大雪、波浪、高潮、暴風、雷、乾燥、低温、その他
 警 報:大雨(土砂災害、浸水害)、洪水、暴風、暴風雪、洪水、大雪、波浪、高潮
 特別警報:大雨(土砂災害、浸水害)、暴風、暴風雪、洪水、大雪、高潮
特別警報は平成25年8月30日から施行され、「数十年に一度」のような災害に対し、すぐ命を守る行動をとることを呼びかけるものです。
気象庁 特別警報について
  
http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/tokubetsu-keiho/index.html

(2) 洪水に関して
洪水には特別警報は導入されていませんが、河川の「洪水予報」が設定されています。水位ごとに「はん濫注意情報」「はん濫警戒情報」「はん濫危険情報」「はん濫発生情報」の4つがあります。
気象庁 指定河川洪水予報
  
http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/bosai/flood.html

(3) 土砂災害警戒情報
大雨警報(土砂災害)が発表されている状況で、土砂災害発生の危険度がさらに高まった時に、避難勧告や住民の自主避難の判断を支援するよう、対象となる市町村を特定して都道府県と気象庁が共同で発表します。
気象庁 土砂災害情報
  
http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/bosai/doshakeikai.html

2.これまでのスーパー台風
(1) 海外における台風
2005年にアメリカ・ニューオーリンズに上陸したハリケーン「カトリーナ」は、ピーク時の勢力は中心気圧が902hPa、最大風速78m(日本の基準では67m)というスーパー台風でした。街を襲った高潮は9m、堤防は8ヶ所で決壊、市内の8割が浸水して、1800人以上の方が犠牲になりました。
また2013年、フィリピンに上陸した台風「ハイエン」は、中心気圧896hPa、最大瞬間風速90mと観測史上例を見ない勢力となりました。この台風により6000人以上の死者、3万人近い負傷者が発生しました。通常、台風は上陸するとその勢力が弱まりますが、ハイエンはほとんど勢力が弱まらずに900hPaの勢力を約一日半維持し、フィリピン中部の島々では60m/s以上の竜巻に匹敵するような強風と、台風による局地的な高潮に長時間襲われました。台風が上陸したレイテ島では、台風の進路にあった住宅や構造物の70~80%が破壊されました。またレイテ島西部のオルモックでも建物の90%が全半壊するなどの甚大な被害が出ました。

(2) 日本における台風
日本では昭和34年(1959年)の伊勢湾台風で、5千人近い死者・行方不明者と4万人近い負傷者が発生しました。この台風も勢力が余り衰えることなく和歌山県潮岬に上陸し、暴風域も広かったため広範囲で強風が吹き、特に紀伊半島一帯と伊勢湾沿岸では高潮、強風、河川の氾濫により甚大な被害を受けました。
昭和36年(1961年)の第二室戸台風は、中心気圧が900hPa未満の猛烈な強さになり、室戸岬では最大瞬間風速84.5m/s以上、大阪で60.6m/sの暴風となりました。この暴風や高潮による被害が大きく、大阪では高潮により市の西部から中心部にかけて31平方kmが浸水しました。
昭和24年(1949年)に神奈川県小田原市の西に上陸したキティ台風も、関東地方では台風の通過が満潮時間と重なったために高潮となり、横浜港では積算潮位より1m以上高くなり、浸水や船舶の被害が多数発生しました。
これ以外にも、台風による最大瞬間風速79.8m/sや85.3m/sという強風が、宮古島で記録されています。近年では大雨による被害が多くなっています。

3.スーパー台風が上陸したら?
(1) 台風の変化
台風は、年間を通して暑い熱帯地方である北緯5度から20度くらいの海上で最も多く発生します。この付近の海は海水の温度も高く雲も多く、台風が渦を巻く力もあるためです。そして太平洋高気圧の風に乗り、台風の進路が決まってきます。台風の勢力が最も強い場所を「最強地点」として抽出すると、日本付近では、本州に上陸したり接近したりする台風の最強地点は平均すると1982年には北緯21度付近、台湾の南側の海上付近でした。それが2012年には台湾にかかるぐらいまで、約150kmも北上している事実が判明しました。そしてこの結果は現在進行形のもので、温暖化が進んだ将来は最強地点が更に北上する傾向が強まる可能性があります。そして最強地点が大きく北へ広がり、日本付近に達することも予想されています。
台風が強くなると大雨も予想されますが、更に心配になるのは高潮のリスクです。高潮とは、湾に向かって台風が進行してきた時に、暴風雨が同じ方向で長時間吹き続けることで生じる「吹き寄せ」と、台風の気圧が低いために海面が持ち上げられる「吸い上げ」が複合して起こる現象です。台風ハイエンでは、2階の天井近くまで水が押し寄せたという証言もあるように、7mの高潮が発生して被害が増大しました。また温暖化が続くと海面の水位自体も上昇します。堤防などハードの整備は進んでいますが、現状の防御レベルを上回るような高潮になる恐れもあります。
国土交通省 高潮発生のメカニズム

https://www.mlit.go.jp/river/pamphlet_jirei/kaigan/kaigandukuri/takashio/1mecha/01-2.htm

(2) スーパー台風上陸からの避難行動
日本ではまだスーパー台風の上陸はありませんが、その危険性が確実に増大してきている現在、もし日本にスーパー台風が上陸したら人々の避難行動はどうなるかのコンピューターシミュレーションを行いました。シミュレーションは台風の発達過程を高精度に表現する研究、高潮の予測の研究、河川の水位変化の研究、人々の避難情報の研究を行っている各研究者の協力の下に行われました。台風は関東に上陸、避難の対象としたのはゼロメートル地帯になる江戸川区・足立区・葛飾区のおよそ180万人です。そのシミュレーション結果は驚くようなものになりました。
①上陸48時間前
台風はまだ本州の1500km以上南の海上に位置し、勢力は940hPa、最大風速50mの「非常に強い台風」の状態
②上陸24時間前
上陸24時間前の夜、急速に発達した台風の気圧は897hPa、最大風速75m、さらに風速15m以上の風が吹く強風半径は900~1000kmの「超大型」台風になっています。超大型台風接近中のニュースが流れているが、台風の中心部は日本の南800kmに位置し、東京ではまだあまり風も強くありません。この時点で区の外へ自主的に避難する人は7万3000人程度。
③上陸半日前
関東地方は次第に暴風域に入り、交通も乱れ始めることが予想される頃です。台風上陸の8時間半ほど前には3つの区では避難勧告が発令され、およそ23%に当たる56万人が避難を開始する。動き出す車は17万台にもなり、道路の大渋滞、荒川・江戸川・隅田川にかかる橋は動きがとれない状態になる。公共交通機関も混乱が始まる。上陸のおよそ5時間前ごろには風の激しさも増し、電車やバスはほぼ全線で運転見合わせになる。この段階で3区の中にいる人は、避難しようとする人・しない人を含めて162万人。56万5000人が区外を目指しますが、わずか15万人しか脱出が出来ていません。
④上陸3時間前~上陸
この時点では、高層ビルに居住している人は上の階にとどまりますが、浸水の恐れがある区域の人は避難所へ向かいます。3区の避難場所は小学校などが指定されていますが、浸水の危険がない安全な場所は多くはありません。その結果、避難場所へ入ることが出来ず、別の場所を求めて歩き回らざるを得ない人が数多く出て来ますが、強風のために次第に身動きがとれなくなってきます。
そのような中、大雨の影響で水位が高くなっている荒川の水位が高潮の影響で上昇、水が堤防を乗り越える「越流」が始まります。浸水のスピードは速く、およそ2時間で3つの区の大半が浸水し、身動きがとれなくなっている人達に襲いかかります。シミュレーションでは最終的に20万人の人達が、命の危険に晒されている結果になりました。

今回のシミュレーションの避難者数は、江戸川区に居住または区内で働いている人にアンケートを行い、3000人からの回答を基にして算出しました。その内容は、ニュースで「超巨大台風が翌日夜には関東地方に上陸すると予想される」と報道された時に、自宅以外の場所に避難しようと思うかを質問したものです。その結果は「必ず自宅以外に避難する」が4%、「周囲の状況や他の情報に注意を払い、その上で判断する」が34%、「自宅で様子をみる」が36%、「職場などに外出する」が6%、「普段どおりの生活をする」が19%でした。
自治体が住民に避難を呼びかける基準はいくつかありますが、最大の根拠は河川の水位になります。その基準は区ごとに設けられており、避難の呼びかけの判断も区ごとに行います。3区とも防災計画上は大規模な浸水の恐れがある時は区外への広域避難を呼びかけますが、具体的な避難先は決まっていません。また荒川の氾濫を想定した避難勧告は出されたことがありません。このような状況で56万もの人々が区外への脱出するのは不可能です。では、どうするか?
次回は、広域避難について考えてみたいと思います。






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