2015年を振り返る

いつもブログをご覧いただき、ありがとうございます。2015年もあとわずかとなりました。今回は今年一年の自然災害を振り返ってみたいと思います。 今年も世界では熱波、大雨、干ばつ、竜巻、台風、サイクロン、地震、火山噴火と様々な自然災害が多発しました。 地震は4月26日にネパールでM7.8.の大地震が発生し、旧市街の歴史的な建造物を始めとする多くの建物被害が発生しました。またエベレストでは、ベースキャンプで雪崩れが発...
いつもブログをご覧いただき、ありがとうございます。
2015年もあとわずかとなりました。今回は今年一年の自然災害を振り返ってみたいと思います。

今年も世界では熱波、大雨、干ばつ、竜巻、台風、サイクロン、地震、火山噴火と様々な自然災害が多発しました。
地震は4月26日にネパールでM7.8.の大地震が発生し、旧市街の歴史的な建造物を始めとする多くの建物被害が発生しました。またエベレストでは、ベースキャンプで雪崩れが発生し、犠牲者が出ました。9000人近くの方が亡くなり、山岳部の集落では未だに犠牲者の数が判明していません。6月6日にはマレーシアのボルネオ島北部でM6.0の地震があり、日本人が一名犠牲になりました。9月17日にはチリ沖合いを震源とするM8.3の大地震が発生しました。チリ北部の町コキンボでは高さ4.5mの津波がありましたが、幸いにも余り大きな被害はありませんでした。10月27日にはアフガニスタンでM5.7の地震が発生して、280人の方が亡くなりました。
火山噴火では、ガラパゴス諸島のイサベラ島にあるウォルフ火山が33年ぶりに噴火、チリのカルプコ火山は40年ぶりに噴火しました。イタリアではシチリア島のエトナ火山も2年ぶりの噴火がありました。
それ以外にもインドやパキスタンでは熱波、ヨーロッパでは大洪水、アメリカでは西側は干ばつ、東側は大雨、また季節外れの高温や低温など、様々な異常気象に見舞われました。

日本では例年になく多くの台風が上陸しました。毎年のように沖縄は台風の被害に見舞われますが、特に今年は先島諸島で風速71mや観測史上4位の風速81.1mが観測されました。4月には与那国空港で1時間に130.5mmという史上最多雨量が観測されました。9月には栃木県と茨城県で鬼怒川決壊による大洪水が発生し、3ヶ月経過した現在でも避難所暮らしをされている方がいらっしゃいます。なお今年は1月から12月までの全ての月で台風が発生するという、異常な年になりました。
地震は震度5弱や5強はありましたが、特に被害が生じる地震はありませんでした(12月19日現在)。その中で特筆すべきは、5月30日に小笠原諸島西方沖、深さ590kmで発生したM8.5の地震です。震源が深いので津波の発生はありませんでしたが、ゆらゆらとした長い揺れで、神奈川県二宮市で震度5強、埼玉県春日部市で震度5弱が観測されました。
今まで震度5の地震が発生すると、新聞にかなり大きな記事が掲載されていましたが、最近は数段ぐらいの小さな記事になりました。特に11月14日に薩摩半島西方沖で発生したM7.0の地震は、津波注意報が発令されましたが最大震度が4で被害もなく、同日に発生したパリのテロ事件の影響で、10行足らずのほんの短い記事の扱いでした。それだけ震度5クラスの地震が当たり前になってしまったということでしょう。

そして今年の日本は、火山の活動がとても活発になった一年でした。2013年11月に噴火が始まった西ノ島は、現在も活発な活動が続いています。5月3日からは箱根山で火山活動が活発になり、6日には噴火警戒レベルが2に引き上げられ、ロープウェイが全線運休となりました。22日には浅間山で火山性地震が増加し、噴火警戒レベルの引き上げが検討されました。そして30日には鹿児島県・口永良部島の新岳が爆発的噴火をして、初めての噴火警戒レベル5が発令され、全島避難になりました。
6月に入ると浅間山で火山性地震が増加し、噴火警戒レベルが2に引き上げられ、18日には小規模な噴火が発生して、山の北側4キロで小規模な火山灰が確認されました。30日には箱根でも噴火警戒レベルが3 に引き上げられ、小規模な噴火が発生して降灰が確認されました。
常に小規模な噴火を繰り返している桜島は、5月に過去最高ペースで500回目の噴火が記録されました。そして8月15日には急激な地殻変動が始まり、一時は噴火警戒レベルが4の避難準備に引き上げられました。
9月に入ると、今度は阿蘇中岳第一火口で噴火が始まり、噴火警戒レベル2から3へ引き上げられました。
その他にも活動が懸念される山が幾つかありましたが、幸いにも口永良部島以外は現在では噴火警戒レベルが引き下げられており、日常生活が戻っています。
*参考 噴火警戒レベル
 レベル1 活火山であることに留意
 レベル2 火口周辺規制
 レベル3 入山規制
 レベル4 避難準備
 レベル5 避難

ところで、12月そして1月は、大地震が起きやすい時期のようです。1990年以降に発生した地震では
・1993. 1.15  釧路沖地震 M7.5 釧路で震度6
・1994.1.17 ノースリッジ地震 (ロサンゼルス) M6.7 死者60人
・1994.12.28 三陸はるか沖地震  M7.6 八戸で震度6 死者3人
・1995.1.17 兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)M7.3 淡路島北部で震度7
死者・行方不明者6,437人
・2001.1.13 エルサルバドル M7.7 死者3,000人
・2003.12.26 イラン・バム地震 M6.6 死者4万人
・2004.12.26 スマトラ島沖地震 M9.1 死者22万7,898人
・2010.1.12  ハイチ M7.0 死者31万6,000人以上 正確な数は不明
このように、1994年のロスと1995年の神戸、2003年のイランと2004年のスマトラのように、翌年の同じ日に被害地震が発生しています。発生当時、「また同じ日に地震だ!」と思ったことを、今でもよく覚えています。

またもっと古い時代にまで遡ると、
・1946.12.21  昭和南海地震 M8.0 死者・行方不明者1,443人
・1945.1.13 三河地震 M6.8  死者・行方不明者2,306人
・1944.12.7 昭和東南海地震 M7.9 死者・行方不明者1,223人
・1934.1.15 ネパール地震 M8.1 死者8,519人
・1854.12.23 安政東海地震 M8.4 死者2~3千人
・1854.12.24 安政南海地震 M8.4 死者1~3千人
・1703.12.31 元禄関東地震 M8.1~8.2 死者6,700人
過去、引き合いに出される代表的な地震が、いずれも12月と1月に発生しています。季節的に地震が発生しやすい要素が、何かあるのでしょうか?

家族全員が揃いやすい年末年始のこの時期に、イザという時に備えて、改めて防災について家族で話し合ってみてはいかがでしょうか。特に東京都在住の方は、各世帯ごとに配布された読本「東京防災」のご一読をお薦めします。
また東京都以外にお住まいの方は、以下のサイトからダウンロードが可能です。
http://www.bousai.metro.tokyo.jp/1002147/

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感染症・伝染病について PART2

いつもブログをご覧いただき、ありがとうございます。 前回に引き続き、今回は現在日本で流行している感染症について、その対策方法、そして将来発生が懸念される感染症について述べたいと思います。1.現在流行している感染症① ノロウイルスによる感染症 毎年冬に流行し、嘔吐や下痢の原因になるノロウイルスを主な原因とする感染性胃腸炎の患者数は、今年10月末以降急増しています。ノロウイルスの特徴はその感染力の強さです...
いつもブログをご覧いただき、ありがとうございます。
前回に引き続き、今回は現在日本で流行している感染症について、その対策方法、そして将来発生が懸念される感染症について述べたいと思います。

1.現在流行している感染症
① ノロウイルスによる感染症
毎年冬に流行し、嘔吐や下痢の原因になるノロウイルスを主な原因とする感染性胃腸炎の患者数は、今年10月末以降急増しています。ノロウイルスの特徴はその感染力の強さです。ウイルスに汚染された食品を食べて感染するほか、患者の嘔吐物や下痢便には大量のウイルスが含まれており、その処理の際に感染する可能性があります。そのため嘔吐物や便を処理する時には、使い捨ての手袋やマスクガウンを着用し、ペーパータオルなどで静かに拭き取った後には、ビニール袋に入れて密封して処分します。
潜伏期間は2日前後と短く、発病すると激しい嘔吐や下痢を1日に10回以上繰り返すこともあります。1~2日で自然に治ることも多いですが、現時点では予防のワクチンや有効な治療薬はありません。
2014年には国内で採取された糞便から、新型ウイルスが確認されました。国内では新型ウイルスに感染した経験がなく、感染を防ぐ抗体を持たない人が大半です。今後この新型ウイルスが国内で大流行を引き起こす恐れがあります。
② エンテロウイルスD68
乳幼児や子供が発症しやすく、発熱やくしゃみ、鼻水などの症状から気管支炎や肺炎、呼吸困難に至り、深刻化すると筋肉に力が入らなくなり、脳神経機能に異常をきたしたり麻痺が残るケースもあります。昨年から全米で1000人以上が感染し14人が死亡したことから「謎のウイルス」と呼ばれています。
国内では2010年と2013年にそれぞれ120人以上の患者が発生していますが、昨年の感染報告者数は9人でした。今年は8月以降から報告が増え始め、11月末の時点で全国で過去最高となる202人に達し、全国各地に広がりを見せています。青森県では10歳の男子に重い麻痺症状が確認されました。現時点ではやはり予防のワクチンや有効な治療薬はありません。
③ RSウイルスによる感染症
RSウイルスは1歳までに約半数が、2歳までにほぼ100%が一度は感染し、その後に何度も罹ります。鼻水やせき、発熱など風邪に似た症状が特徴で、初めて感染した乳幼児の25~40%が肺炎や気管支炎になるなど重症化しやすい。せきやくしゃみなどのしぶきや接触によってうつります。感染力が強く、手すりなどに付着したものでもその後4~7時間は感染力が持続するという。
RSウイルスも予防のワクチンはなく、風邪と誤解して受診が遅れがちになる場合があります。2歳以下の場合、重症化して入院が必要になったり、突然亡くなったりするケースもあります。特に新生児や37週未満で生まれた早産児、心疾患などのある子は重症化しやすいようです。特効薬はなく、症状を和らげる治療が中心になります。
一番重要なのは乳幼児に感染させないことで、今の時期は乳幼児をむやみに人込みの中に連れ出さない、風邪をひいた人を乳幼児に近付けない、乳幼児が触れるおもちゃなどは細目にアルコール消毒する、風邪を引いた家族はマスクを着用するなどを守ることが大事になります。
④ インフルエンザ
インフルエンザウイルスによる急性の呼吸器感染症で、毎年冬になると各地でインフルエンザが流行し、学級閉鎖が相次いだりします。1~3日ほどの潜伏期間の後に、38度以上の高熱、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛・関節痛などが突然現われ、咳、鼻汁などの上気道炎症状が続き、約1週間ほどで回復します。風邪と似たような症状ですが、全身症状が風邪に比べて強くなります。特に高齢者や呼吸器・循環器・腎臓に慢性疾患を持つ人、糖尿病などの代謝疾患、免疫機能が低下している患者はインフルエンザの悪化と共に、呼吸器に二次的な感染を起こしやすくなります。小児では中耳炎の合併、熱性痙攣や気管支喘息を誘発する場合もあります。近年、幼児を中心とした小児において、急激に悪化する急性脳症が増加しています。毎年50~200人のインフルエンザ脳症の患者が報告されており、その約10~30%が死亡しています。
インフルエンザウイルスはA, B, Cの3つの型があり、流行的な広がりを見せるのはA型とB型です。A型インフルエンザでは、数年から数十年ごとに世界的な大流行が見られますが、これは突然別の亜型ウイルスが出現して、従来のウイルスと代わることによって起こります。1918年のスペインかぜ(H1N1)は39年間、1957年にはアジアかぜ(H2N2)が11年間続き、1968年には香港型(H3N2)が、そして1977年にソ連型(H1N1)が加わり、現在はA型のH3N2とH1N1、及びB型の3種が世界中で流行しています。

2.感染症に対する対策
感染症に対する基本的な対策としては、身の回りを清潔に保ち、免疫力を低下させないことが大切です。十分な睡眠をとり、バランスのとれた食事や基礎的な体力をつける、規則正しい生活を送ることが基本になります。そして予防法としては外出時のマスク着用、うがい、手洗いという基本的なものになります。
・正しいマスクの着用方法
  http://www.medicom-japan.com/special/mask.html
・正しい手の洗い方
  http://www.medicom-japan.com/special/hand-washing.html
・正しい手指消毒の方法
  http://www.medicom-japan.com/special/hand-hygiene.html
・ノロウイルス等の食中毒の予防について
  http://www.gov-online.go.jp/featured/201106_02/

インフルエンザには予防接種がありますが、実は感染を予防する効果はありません。厚生労働省の研究班の報告によれば、感染した場合もインフルエンザ発症と重症化を抑える効果はあるそうです。インフルエンザワクチンは、接種を受けた人の体にウイルスを排除する抗体を作り、同じウイルスが入って来た時にそれを攻撃して、発症や重症化を抑えるものです。ただインフルエンザワクチンに関しては、乳幼児や高齢者は抗体ができにくい上、インフルエンザウイルス自体が毎年少しずつ変異するため、予防接種を受けていても発症したり、同じ年にA型とB型の両方に罹ったりという事態も起こります。特に持病もない元気な10代~50代なら、インフルエンザに罹患しても1週間程度で回復します。それなら予防接種は必要ないと考えるなら、「受けない」という選択肢もあり得ます。
詳細は下記のサイトをご覧ください。
http://shokutokenkounowa.blog.fc2.com/blog-entry-211.html

3.将来発生が懸念される感染症
近年、様々な新しい感染症が現れて来ました。1981年に初めて発見されたエイズ(後天性免疫不全症候群)のように研究が進み、治療効果が高くなってきた感染症もあります。しかし感染症で最も懸念されることは、ウイルスが変異を起こすことです。冬場に多いノロウイルスによる感染性胃腸炎も、新型ノロウイルスの発生が確認されました。同じウイルスの場合、過去に一度感染していたら、次に感染した時は症状が軽く済みます。しかし新型の場合は人間がまだ免疫を持っていないため、重症化する可能性も出て来ます。
その中でもっとも懸念される感染症は、「鳥インフルエンザ」のヒトからヒトへの感染です。ウイルスは感染した細胞の中で、自分の遺伝子のコピーを作成して増殖していきます。インフルエンザウイルスの遺伝子はRNAで、このRNAは誤ったコピーが発生しやすく、これを「変異」といいます。インフルエンザウイルスは常にこの変異が起こっています。通常はRNAの一部だけの変異が、数十年に一度、大規模な変異を起こします。今までは鳥だけに感染していたウイルスが変異して、人に感染するようになります。更に人から人に感染するようになったものが新型インフルエンザです。
鳥インフルエンザが人に感染する新型インフルエンザに変異するのは、現在以下の3通りが考えられています。
① 鳥と人の両方のインフルエンザウイルスが、両方のウイルスに感染しやすいブタに同時に感染し、ブタの体内で両方の遺伝子が交じり合うことにより、全く新しいインフルエンザウイルスになる。
② 鳥インフルエンザが突然変異を繰り返しているうちに、ヒトからヒトに対する感染性を獲得して新型インフルエンザになる。
③ 鳥と人の両方のインフルエンザウイルスが、人の体内で遺伝子を交わらせて新型インフルエンザになる。
鳥インフルエンザ自体は、日本でも毎年各地で発生しており、ニュースで鳥を処分している映像を見る機会も多くなってきました。これは鳥から鳥への感染です。2003年以降、アジアでは鳥からヒトへ133人が感染し、68人が死亡しています。しかし2007年には南京市で鳥インフルエンザに父子が感染し、子供が死亡しました。父は子から感染したもので、中国で初めてのヒトからヒトへの感染例でした。子供の感染源は不明です。2013年にはやはり南京市で、猛毒型のH7N9亜型鳥インフルエンザに4人の感染が確認されました。いままではこの型はヒトへの感染はありませんでしたが、ブタなどを通じてヒトに感染するように変異した可能性があります。このようにウイルスは変異を起こすため、人間の間で感染(ヒトヒト感染)する能力を持つウイルスが生まれることが懸念されています。もしそうなったら第二のスペイン風邪になり、パンデミックが引き起こされる恐れがあります。

映画「感染列島」で感染経路が描かれていましたが、こうもりが保持する菌に感染した海外在住の日本人が一時帰国し、その家族が感染します。そして受診した家族を診察した医師が、吐血の飛沫を浴びて感染します。また海外に帰国する際に駅で吐血し、それを清掃処理していた駅員が手袋をしていない手で自分の眼をこすり、やはり感染します。
このように飛沫感染するウイルスは、皮膚表面にある傷口や目の粘膜からも入るので、手袋やゴーグル着用、映画ではフェースガードまで着用していました。
最後にインフルエンザのパンデミックが発生した時に備えて、事前に出来る準備を紹介します。このような事態にならないことを祈ります。
http://www.seirogan.co.jp/fun/infection-control/influenza/preparation.html


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感染症・伝染病について PART 1

いつもブログをご覧いただき、ありがとうございます。11月には札幌で62年ぶりという大雪になりました。いよいよ冬本番に突入のようです。それと同時にインフルエンザの流行が始まる季節にもなってきました。比嘉良丸氏は、この時期はいつも感染症・伝染病が広がらないようにという御神事も行っています。そこで今回は2回にわたり感染症・伝染病についてとりあげてみたいと思います。まず第1回目は過去に流行したもの、そして近年流...
いつもブログをご覧いただき、ありがとうございます。
11月には札幌で62年ぶりという大雪になりました。いよいよ冬本番に突入のようです。それと同時にインフルエンザの流行が始まる季節にもなってきました。比嘉良丸氏は、この時期はいつも感染症・伝染病が広がらないようにという御神事も行っています。そこで今回は2回にわたり感染症・伝染病についてとりあげてみたいと思います。まず第1回目は過去に流行したもの、そして近年流行した感染症・伝染病について紹介したいと思います。

1.感染症とは
感染症というのは、病原微生物や病原体(細菌、スピロヘータ、リケッチア、ウイルス、真菌、原虫、寄生虫)が体内に侵入して定着・増殖して感染を起こすと組織を破壊したり、病原体が毒素を出したりして体に害を与えると、一定の潜伏期間を経て病気になるものを「感染症」といい、「伝染病」は伝染性を持つ感染症のことになります。ここではまとめて「感染症」と記します。

2.歴史的な感染症
① ペスト
現代のペストと同じ症状の感染症で記録に残る最初のものは、542年に東ローマ帝国で流行したものであり、最も猛威を振るったのは14世紀のヨーロッパになります。感染すると2日~1週間で発熱し、皮膚に黒紫色の斑点や腫瘍ができることから「黒死病」とも呼ばれました。中国で大流行し、モンゴル帝国によるユーラシア大陸の東西を結ぶ交易を背景に、イスラム世界からヨーロッパ全土に拡大しました。全世界で6,500万人が亡くなったといわれています。その後も何度か流行を繰り返し、17世紀には14世紀とともに小氷期によりヨーロッパの気候が寒冷化し、ペストが大流行して飢饉が起こり、戦乱の多発により人口が激減しました。ペスト菌の存在がわからなかった時代には、大流行のたびにその原因が特定の人々に押し付けられ、魔女狩りやユダヤ教徒を迫害する事件が続発しました。
日本では明治になって国外から侵入したのが、初めてのペスト流行だとされています。また1960年代のベトナムでペストが大流行し、死者が年間1万人を超える年もあったようです。ベトナム戦争等による社会秩序の混乱が、伝染病の蔓延を促進した典型例と言われています。
② 天然痘
天然痘は有史以来、高い死亡率、治癒しても瘢痕を残すことから、世界中で悪魔の病気と恐れられてきた代表的な感染病です。天然痘ウイルスによる高熱、嘔吐、腰痛があり、全身に発疹し、既に1万年前にはヒトの病気だったようです。天然痘で死亡したと確認されている最古の患者は、紀元前1157年に死亡したとみられる古代エジプト第20王朝ファラオのラムセス5世で、ミイラの頭部に天然痘の痘疱があることが確認されています。「太陽王」と呼ばれたフランスのブルボン王朝ルイ14世も、その死因は天然痘です。また1521年にエルナン・コルテスがアステカ王国を征服しましたが、コルテス一行が持ち込んだ天然痘ウイルスに先住民族が感染して激減してしまったことも、征服された一因になったと言われています。
天然痘は1977年を最後に患者の発生は報告されておらず、WHOは1980年に根絶宣言を行いました。現在はアメリカとロシアのバイオセーフティーレベル4の施設で、厳重に管理されています。ヒトに感染するものの中では、天然痘は人類が根絶した唯一の感染症です。以前は天然痘の予防接種「種痘」が行われていましたが、現在天然痘ウイルスは自然界に存在しないとされているため、1976年以来、日本では行われていません。しかし厳重に保管されているとはいえ、天然痘ウイルスは現存しています。万一外部に漏れるような事故・事件が発生したら、とんでもない状況を招くことになります。また生物兵器の対策として、軍隊でも海外派遣される隊員に対しては集団接種が行われることがあるようです。
③ スペイン風邪
1918年、アメリカ合衆国の兵士の間で流行し始めたスペイン風邪は、鳥インフルエンザの一種と考えられ、人類が最初に遭遇したインフルエンザのパンデミックとなりました。感染者は6億人(当時の世界人口は12億人)、死者は4000万人から5000万人に上りました。この数は戦争や災害などすべてのヒトの死因の中で、最も多くのヒトを短期間で死に至らしめた記録的なものです。スペイン風邪の病原体は、鳥インフルエンザが突然変異しヒトに感染する形に変化し、これに対する免疫を持った人が極めて稀であったため、大流行になったと考えられています。
死者数は第一次世界大戦の死者を遥かに上回り、日本では当時の人口5,500万人に対して39万人が死亡、アメリカでは50万人もの人々が死亡しました。インフルエンザに対する免疫が弱い南方の島々では、島民がほぼ全滅するケースもありました。スペイン風邪は、それまでヒトに感染しなかった鳥インフルエンザが突然変異し、受容体がヒトに感染する形に変化するようになったことが原因と考えられ、これに対する免疫を持った人が極めて稀であったため、大流行になったと考えられています。当時は第一次世界大戦の最中でしたが、この大流行により戦争終結が早まったとも言われています。

3.近年流行した感染症
近年流行した、または現在も流行している代表的な感染症を紹介します。
① コレラ
コレラ菌による感染症で、突然の高熱、嘔吐、下痢、脱水症状が起こり、その感染力は非常に強く、これまでに7回のパンデミックが発生しています。日本では幕末1858年から3年に亘り全国的な大流行となり、江戸だけで10万人が死亡したといわれています。この時は長崎から始まり、江戸で大流行して函館まで広がりました。
最も重要な感染源は、患者の糞便や吐瀉物に汚染された水や食物です。通常の接触では人から人への感染の危険性は低く、不衛生な食材や調理環境で危険性が高く、流行地域ではアイスクリームや生もの、生水や氷は避けて下さい。コレラの直接の死亡原因となるのは、大量の下痢と嘔吐による水と電解質の損失によって起きる脱水症状です。そのため失われた水と電解質を補給することで、きわめて効果的に死亡を抑制することが出来ます。
コレラの流行は現在でも続いており、2015年8月からはアフリカ東部のタンザニアで大流行しており、これまでに少なくとも9871人が感染して150人が死亡したとWHOが伝えています。
② 新型インフルエンザ
2009年、当初はメキシコとアメリカ合衆国での局地的流行だったものが、春頃から翌年3月にかけ世界的に流行し、豚経由とみられたため、当初は「豚インフルエンザ」と呼ばれました。季節性インフルエンザに比べて、下痢などの消化器症状が多い可能性が指摘されています。また慢性呼吸器疾患や慢性心疾患などの持病のある方は、重症化する可能性が高い場合があります。ただし現在の日本では、季節性インフルエンザとほぼ同様の扱いになっています。
③ デング熱
熱帯や亜熱帯の全域で流行しており、2014年には日本でも感染者が発生しました。原因はこのウイルスを持つ蚊に刺されることにより発症します。ヒトからヒトへの直接感染はありません。感染すると発熱、頭痛、筋肉痛や皮膚の発疹が主症状です。
④ MERS (中東呼吸器症候群)
2012年9月に初めて発見されました。サウジアラビア、カタール、ドバイ等の中東地域で感染が報告されており、この名がつけられました。その他、ヨーロッパでも患者が確認されていますが、いずれも中東への渡航歴のある人、もしくはその接触者です。肺炎を主症状とし、死亡率は40~50%と非常に高くなっています。
2015年の韓国での流行は、バーレーンに半月間滞在した男性が自身の感染を知らずに帰国し、発症後に複数の病院を受診、その内の一つの病院で感染が広がり、その後、数名の隔離対象者が各地へ旅行したりで一気に騒ぎが拡大したものです。現在は自己申告になっているため、実際の感染者が不明確になっています。
⑤ エボラ出血熱
2014年から西アフリカで流行した、現在進行形の感染病です。1976年にスーダンで初めて発見され、最初の感染者の出身地付近のエボラ川からこの名前が付けられました。これまでにもアフリカ大陸で10回、突発的に発生し流行しましたが、感染した時の致死率は50~90%と非常に高く、最も危険な感染病の一つになっています。2015年11月時点では、西アフリカ3ヶ国(ギニア、リベリア、シェラレオネ)の感染者数は28,601人、死亡者数は11,299人になっています。また終息宣言が出された後も、新たな患者が発見されています。
患者の血液、分泌物、排泄物、体液や唾液などから飛沫感染し、死亡した患者の遺体からも感染する可能性があります。ただし空気感染はしません。今回の流行では治療に当たった医療者の感染も相次ぎ、本国での治療を受けた医師が回復した例もありましたが、現在でも体内にウイルスは存在しているようです。
映画「アウトブレイク」はこの病気をモデルにしています。
⑥ エイズ (後天性免疫不全症候群)
ハリウッドの有名俳優がHIV感染したとの告白がありましたが、エイズはヒト免疫不全ウイルス(HIV)の感染によって引き起こされます。HIV感染症は性感染症で、性行為により感染します。また血液を介して感染することもあります。日本ではHIVを含む血液から作られた血液製剤により、全血友病患者の4割にあたる方が感染してしまいました。
最近ではHIVに感染しても発症を抑える治療薬剤が多数開発され、エイズで亡くなる患者数は大幅に減りました。しかしHIV感染症自体を根治することは不可能なため、生涯薬を飲み続ける必要があります。

以上、代表的な感染症を取り上げてみましたが、これ以外にも様々な感染症が存在します。また歴史的な感染症も、いつまた現代で流行するかわかりません。
次回は、現在日本で流行している感染症をとりあげ、その予防方法も紹介したいと思います。

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