カルデラ噴火について その2

いつもブログをご覧いただき、ありがとうございます。

前回は日本にあるカルデラについて紹介しました。今回は、実際にカルデラ噴火が起きたらどうなるか、過去の噴火事例から考えてみたいと思います。

 

1.超巨大噴火(カルデラ噴火)の発生の仕組み

① マグマの蓄積

超巨大噴火が発生するためには、地下に大量のマグマが蓄積されている必要があります。マグマ溜りの構造はまだ明らかになっていない場合もありますが、超巨大噴火が発生する場所では、地下10キロメートルほどの所に薄い円盤状に広がっている場合が多いと考えられています。

② 噴火の開始

超巨大噴火を引き起こせるほどのマグマを蓄積した状態となった後、例えばマグマの圧力によって岩盤の弱い所が破壊されてマグマが地表に達するなど、何らかのきっかけによって噴火が始まります。そして複数の火口が出来、これらはマグマ溜りを縁取るような円周上に出来る場合が多いです。

③ 火口が繋がって円周上に

噴火が継続することで火口が拡大し、円周上の火口同士が連結し、ひとつながりの火口となります。火口からは噴煙が激しく噴出し、高度数十キロメートルまで到達します。火砕流が全方位に発生し、周囲を呑み込みます。火口が円周上に繋がって支えを失った岩盤は、陥没を始めます。

④ カルデラを形成

噴火は数時間から数日継続し、終息します。円周上の火口の内側は大きく陥没し、巨大なカルデラが形成されます。カルデラの直径は数十キロメートルにもおよぶことがあります。マグマの供給が続いていれば、マグマの蓄積がまた始まり、数万年から数十万年後には再び超巨大噴火が発生します。

 
 理科ネットワーク 火山噴火シュミレータ

  http://rika-net.com/contents/cp0300a/contents/K241.html

 

2.喜界カルデラ噴火

最も直近の7300年前に噴火した喜界カルデラは、九州最南端、大隅半島佐多岬のさらに南西50キロに位置している25×15キロの規模の海底カルデラで、最深部は水深500mにも達しています。現在ある薩摩硫黄島、新硫黄島、竹島は、喜界カルデラの北縁にあたり、カルデラの北の縁がかろうじて海面に顔を出していた部分です。

この噴火によって発生した火砕流は、海を渡って50km先の鹿児島県南部を埋め尽くしました。火砕流は高温の火山ガスと混合一体化しているため地面との摩擦が少なく、100km/時を超えるスピードで一気に遠くまで流れます。またガス成分が多い場合は比重が小さいため、海面上を滑走することもあります。この時の噴火では、9500年も前から始まっていた独自に発達した日本最古の縄文定住集落が、火砕流により壊滅してしまいました。当時の人々は、沖合に突如湧き上がった巨大なキノコ雲に、「何だろう?」と思う間もなく襲われてしまったことでしょう。

この噴火で降り積もった火山灰は濃いオレンジ色が特徴の「アカホヤ火山灰」と呼ばれ、南九州では50cmを超える厚さの火山灰で覆われました。そして四国や紀伊半島は厚さ20cmを超える灰白色の火山灰で一面を覆われ、遠く離れた関東地方にも厚さ数センチの火山灰を降らせました。西日本の森林は枯れ果て、食料の大半を森林に頼っていた西日本の縄文人は飢餓に陥り、その上、有毒な火山灰による呼吸器障害に見舞われ、数週間のうちに多くが死滅しました。そして喜界カルデラからの超巨大噴火後、南九州では900年あまりもの間、豊かな照葉樹林の森は復活せず、人が住めない無人の地となっていたようです。

カルデラ噴火が研究され始めた現在、喜界カルデラの観測航海が行われました。その結果、高さ600mの巨大な溶岩ドームが海底に形成されており、熱水と共に火山性ガスが噴き出す、現在も活動している活火山ということが判明しました。

 
 産経ニュース  2017. 3.31

  http://www.sankei.com/photo/daily/news/170331/dly1703310015-n1.html

 

3.姶良カルデラ噴火

喜界カルデラ噴火より更に巨大な噴火だったのは、29000年前に噴火した姶良カルデラです。この時の噴火は、現在の桜島火山付近で生じた大規模なプリニー式噴火で始まりました。火山灰は九州で50cm以上、近畿地方や名古屋で20cm以上、関東地方でも10cm以上、東北地方の仙台でも5cm以上降り積もりました。マグマの噴出量は150立方キロで、1991年のフィリピン・ピナツボ火山の噴火5立方キロの30倍以上の規模になります。琵琶湖の貯水量が30立方キロ弱なので、琵琶湖5杯分のマグマが噴出したことになり、ちょっと想像力が追い付きません。

姶良カルデラ周辺には、軽石を含む真っ白な火山灰のシラス台地が発達しています。この台地は崩れやすく、集中豪雨などがあるとしばしば崖崩れ災害を起こします。シラス台地の厚さは100mを超える場合もまれではありません。この台地を生み出したのが、姶良カルデラから噴出した入戸火砕流です。火砕流は鹿児島県全域に広がっています。

神奈川県の丹沢山地では、大量の富士火山起源の黒色の降下スコリア堆積物が見られますが、その中に白色火山灰層が挟まっています。その厚さは13cm余りあり、それほど遠くない火山由来だと思われていました。ところが、その後の研究でこの火山灰層が1000kmあまりも離れた南九州の姶良カルデラ起源であることが判明し、「姶良丹沢火山灰」略して「AT火山灰」と命名されました。AT火山灰は入戸火砕流が噴出した際、成層圏まで噴き上がった巨大なキノコ雲からもたらされたものです。もし現在、当時の規模の火砕流が姶良カルデラから噴出したら、170万人近い鹿児島県の住人のほとんどが“瞬殺”になってしまいます。

 
 みんなの桜島

  http://www.sakurajima.gr.jp/sakurajima/001323.html

 

4.阿蘇カルデラ噴火

この姶良カルデラ噴火より更に巨大な噴火を起こしたのが、阿蘇カルデラです。このカルデラは約27万年前、14万年前、12万年前、9万年前の、4回の巨大噴火によって形成されてきたものです。その中で最大規模の噴火が、阿蘇4噴火と呼ばれる最も新しい噴火です。マグマ噴出総量は約1000立方キロで、阿蘇火山最大の噴火であるのみならず、第四紀と呼ばれる過去約260万年間に日本列島で起こった最大規模の噴火にもなります。

この噴火では2度の大規模な火砕流が発生し、200km以上の距離まで到達し、九州のほぼ全域から山口県、天草諸島に至る広大な範囲が一瞬にして焼き尽くされました。現在の人口でいうと1100万人近い人々が居住する地域が、火砕流によって覆われてしまったことになります。そして火砕流の噴出時には、巨大な噴煙が数万メートルの高さの成層圏にまで到達し、火山灰を降らす噴煙が日本列島全体を覆いました。火山灰の規模は姶良カルデラが噴火した際のAT火山灰を遥かに超えており、津軽海峡を越えて北海道でも15cm以上も降り積もりました。九州から北海道まで、日本列島全体が15cmを超える厚い火山灰で覆われてしまったわけで、完全なる「日本埋没」の規模でした。


  阿蘇火山博物館 阿蘇について

  http://www.asomuse.jp/aboutaso/

   阿蘇火砕流

  http://sakura1.higo.ed.jp/ws/kchigaku/hp/aso/zu/kasai.htm

 

5.もし巨大カルデラ噴火が起きたら

巨大カルデラ噴火は、途轍もないマグマが一気に噴出します。カルデラは北海道と九州に集中していますが、日本列島全体に大きな影響を及ぼすのは九州にあるカルデラが噴火した場合です。火山灰が偏西風で東へ運ばれ、日本列島全体を覆う可能性があるからです。

まず最初のプリニー式噴火によって、九州中部では場所によっては数メートルもの軽石が降り積もって壊滅的な状況に陥ります。そしてクライマックス噴火が始まると巨大な噴煙柱が崩落して火砕流が発生し、全方位へと広がって行きます。数百℃以上の高温の火砕流は全てのものを飲み込み、そして焼き尽くし、発生後2時間以内に700万人の人々が暮らす領域を覆い尽くしてしまいます。

九州が焼き尽くされた後、中国・四国一帯では大量の火山灰が降り注ぎます。そして降灰域はどんどん東へ広がり、噴火開始の翌日には近畿地方へ達します。大阪では火山灰の厚さは50cmを超え、木造家屋の半数近くは倒壊します。その後、首都圏でも20cm、青森でも10cmもの火山灰が積もり、北海道東部と沖縄を除く全国のライフラインは完全に停止します。


火山灰による影響

① 交 通 

 道 路:5cm以上で通行不能

 鉄 道:10cm以上で通行不能

 航 空:0.5cm以上で空港閉鎖

② ライフライン

 電 力:1cm以上で供給不能(停電)

 水 道:1cm以上で供給不能(断水)

③ 農 林

 農作物:2cm以上で収穫不能、10cmで回復に数十年

 森 林:1cm50%被害、10cmで破滅的被害

④ 生 活

 健 康:1cm以上で呼吸器障害

 家 屋:50cm(降雨時は30cm)30%以上全壊


巨大カルデラ噴火の発生による直接的な被害者は、火砕流と降灰合わせて1000万人程度と考えられます。しかし水道は給水不能、発電も不可能、国内ほぼ全ての交通網はストップし、生活不能に陥った人達に対する救援・復旧活動も絶望的になります。救援活動が殆ど不可能な状態では、1億人以上が命を落とすこともあり得ます。

 
 YAHOO
ニュース 巨大カルデラ噴火 神戸大学教授・巽 好幸

  https://news.yahoo.co.jp/byline/tatsumiyoshiyuki/20170511-00070808/


 
2014年に鹿児島県の川内原発の再稼働が決定した際、原子力規制委員会の委員長は、川内原発の安全性レベルについて「世界最高レベル」と評価しました。噴火についても事前に予測ができるため、燃料棒の取り出しが出来るから安全とも述べています。また噴火した際の火砕流も原発を避けるという不可解な予測になっていました。それに対して火山学者は「噴火の予測は不可能」と強く主張しています。このような背景で稼働再開になりましたが、実はこの時「もしカルデラ噴火が起きたら12000万人が亡くなるので、燃料棒を取り出していようがいまいが関係ない」という発言も委員長からありました・・・。

 
 日本火山の会 画像でたどる死都日本

  http://www.kazan-net.jp/shitowww/index.html







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