津波について

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さて、突然ですがここで質問です。11月5日は何の日でしょうか?答えは「津波防災の日」です。まだ広く周知されていませんが、2011年の東日本大震災を受けて、津波対策を総合的かつ効果的に推進するため、同年6月に「津波対策の推進に関する法律」が制定されました。この法律では津波対策に関する観測体制の強化、調査研究の推進、被害予測、連携協力体制整備、防災対策の実施などを規定するとともに、「津波防災の日」と定めました。そして津波対策について国民の理解と関心を高めるため、全国各地で防災訓練の実施やシンポジウム等を開催しています。11月5日は1854年に安政南海地震(M8.4)で和歌山県広村(現・和歌山県広川町)を津波が襲った際、稲わらに火を付けて村人達を高台に避難させた庄屋・浜口梧陵の実話を元に小泉八雲が執筆した「稲むらの火」にちなんで制定されました。11月14日には薩摩半島西方沖を震源とするM7.0の地震が発生し、津波注意報も発令されました。今回はこの「津波」について述べてみたいと思います。

1.津波の仕組み
海底下で大きな地震が発生すると、海底が隆起または沈降します。これに伴って海面が変動して、大きな波となって四方八方へ伝播するものが津波です。よく津波の前には必ず潮が引くと言われますが、地震を発生させた地下の断層の傾きや方向によって、また津波が発生した場所と海岸の位置関係によっては、潮が引くことなく最初に大きな波が海岸に押し寄せる場合もあります。
津波は海が深いほど速く伝わる性質があり、沖合ではジェット機並みの速度で、逆に陸地に近づき水深が浅くなるほど速度が遅くなります。そのため後から来る波が先の波に追いつくため、波高が高くなります。また遅くなるといってもオリンピックの短距離選手並みのスピードなので、津波が海岸にやって来るのを見てから避難したのでは間に合いません。
また津波の高さは海岸付近の地形によって大きく変化します。更に津波が陸地を遡上することもあります。岬の先端やV字型の湾の奥などの特殊な地形の場所では、波が集中するので特に注意が必要です。津波は何回も押し寄せます。その押し寄せる波と引く波がぶつかり合い、思いがけない高さになる場合もあります。必ずしも最初に来る波が一番高い訳ではありません。そして津波は「水の壁」が押し寄せる形になります。そのため高さ20cmといってもその力は大きいので、人間は簡単に倒されてしまいます。
津波のメカニズムをわかりやすく説明した動画(内閣府・防災教育DVD)を紹介します。
https://www.youtube.com/watch?v=xRt_4_QVIWM

2.津波による被害
海岸に押し寄せた津波は、川をさかのぼって内陸部に到達することがあります。そのため海抜が低い土地を中心に、広範囲にわたって水につかってしまうことも予想されます。田畑が海水につかってしまうと、その塩害により復旧まで時間を要します。
大きな津波が直撃すれば、あらゆるものが水の中に飲み込まれてしまいますし、海岸近くにある建物は倒壊してしまいます。また引き波によって、人々も、倒壊した建物も、自動車も船も、すべてが海に流されてしまいます。また、破壊された家屋、プロパンガスボンベ、自動車などのオイルや可燃性ガスが原因で火災が発生し、漂流物が燃えながら津波によって流され、住宅街や林野で新たな火災を引き起こしたりもします。

3.近年発生した津波を伴う地震
① スマトラ沖地震
2004年12月26日、インドネシア・スマトラ島北西沖のインド洋でM9.3の地震が発生しました。この地震は1960年チリで発生したM9.5に次ぐ、世界で2番目に巨大なもので、1200km~1300kmにわたり断層がずれたものです。この大きな断層のずれにより平均10mに達する高さの津波が数回、タイ、マレーシア、ミャンマー、スリランカ、インドを始め、遠くはアフリカ大陸のソマリア、ケニア、タンザニアまで押し寄せました。その大規模な津波により死傷者22万人、負傷者13万人という観測史上最悪の惨事となりました。
太平洋側の各国では、津波の恐れがある地震が発生した場合ハワイにある太平洋津波警報センターから警報が出されますが、当時のインド洋各国ではこのような津波早期警報システムがなく、避難勧告を出すことが出来なかった事が多くの死者を出す一因となりました。
② 北海道南西沖地震 (奥尻地震)
1993年7月12日に北海道奥尻島北方沖の日本海海底でM7.8の地震が発生し、発生後数分で奥尻島に津波が到達しました。また地震発生の4~5分後には、島の対岸にある北海道南西岸の瀬棚町や大成町にも津波が到達しました。この地震は津波や火災で死者202人、行方不明者28人を出し、日本海側で発生した地震では近代以降、最大規模の地震になっています。
③ 東北地方太平洋沖地震 (東日本大震災)
2011年3月11日14時26分に宮城県牡鹿半島の東南東約130km、仙台市の東方沖70km付近の三陸沖の海底、深さ24kmを震源として発生したM9.0の日本観測史上最大の地震です。太平洋プレートと北米プレートの境界域における海溝型地震で、その影響により海底が水平方向に約24m、垂直方向に約3m移動。そのため地震発生後30分~1時間ほど後に、観測史上最大級の大津波が押し寄せました。最大で海岸から6km内陸部まで浸水、岩手県大船渡市では最大遡上高40.1mが観測されました。津波の襲来が地震発生後30分近く経ってからだったので、直後に避難した方が大丈夫と思って自宅に戻り津波に巻き込まれたり、15,000人を超える犠牲者が出てしまいました。この地震は宮城県栗原市で震度7が観測されましたが、地震動による建物の被害は意外に少なく、ほとんどが津波による被害でした。

4.これから予想される津波を伴う地震
① 南海トラフ巨大地震 (東海・東南海・南海地震)
将来、確実に発生が予想される地震の一つに南海トラフ巨大地震 (東海・東南海・南海地震)が挙げられます。三つの地震が連動して発生する場合と個別に発生する場合があり、次に来るものは連動型と想定されています。また更に南の日向灘、そして琉球トラフまで連動すると予想する専門家もいます。この地震についての詳細は別の機会に譲りますが、もし連動するとM9.0クラスの超巨大地震が発生、駿河湾から紀伊半島沖を中心に大津波が発生した場合、関東以西の30都道府県で最悪32万3000人の死者が出る可能性があるとの予想が中央防災会議から発表されています。
② 北海道と茨城以南の太平洋側
この地域は東日本大地震で割れ残った部分に当たります。特に北海道は千島列島沿いが空白域になっており、やはりM9クラスの地震が予想されています。もしこの地域で地震が発生すると、北海道の沿岸地区が津波に襲われる危険性が高いです。
③ 南西諸島
この地域は地震が少ないと思われていますが、大地震が100年に一度起きています。2010年には沖縄本島南東沖でM7.2の地震が発生し、糸満市では震度5強が観測されました。沖縄本島での震度5強は、実に101年ぶりになります。また特に恐ろしいが津波の発生で、1771年の明和の大津波では八重山で85mという世界一の津波に襲われ、1万人以上の犠牲者を出しています。最近、沖縄本島を始めこの地域を震源とする地震が増加してきており、次の大地震の発生が懸念されています。
④ その他
2010年に発生したチリ地震は、津波が日本まで到達しました。過去にも三陸地方では何回も津波被害を受けています。このように日本から遠く離れた国で発生した地震を始め、千島海溝、伊豆・小笠原海溝等、日本近海での地震も津波発生が予想されます。

5.津波への対応
① 津波警報・注意報の発表
津波発生が予想される地震(M7.0以上)が発生した場合、気象庁が発生後約3分で津波警報・注意報の発表を行います。それに伴いテレビ画面上に日本地図が表示され、津波が予想される地域に注意報(20cm~1m)は黄色、警報(1m~3m)は赤色、大津波警報(3m以上)は紫色で図示されます。また津波到達予想時刻と予想される津波の高さが、津波予報区ごとに発表されます。M8を超える巨大地震の場合は正しい地震の規模をすぐには予測できないため、その海域における最大級の津波を想定し、「巨大」という言葉を使った大津波警報で非常事態であることを伝えます。
② 避難
テレビ・ラジオや防災無線等で避難が呼びかけられますが、東日本大震災の際は地震による停電で津波発生を知ることが出来なかったり、注意報から大津波警報に切り替わったのが分からなかった等、情報周知に問題が発生した地域もありました。そのため普段より津波発生が予想される地域に居住される方は、まず第一に避難を考えることが重要です。
そして津波の避難のポイントは、「縦方向(高さ)の避難」です。南海地震では地震発生後5分以内に数メートルの津波が予想される地域が多くあります。健康な若者でも5分間で走れる距離は限られてしまいます。そこで近くの頑丈な高いビルに逃げ込むことが、命を救う第一歩になってきます。自治体によっては「津波避難ビル」の指定をして、会社やマンションなどと非常の場合は避難者を受け入れてもらう協力体制をとっている所もあります。また「津波タワー」の建設や、高台へ避難しやすい通路や階段などの整備も進められています。
そして津波の襲来は、地震発生後数分で到達する地域や、東日本大震災の時のように30分過ぎてから到達する地域もあります。もう津波は来ないと簡単に決断することは、命の危険を招く可能性もあります。また津波は何回も襲来します。安全のためには避難した高台で一晩過ごすぐらいの覚悟を持ちましょう。
③ 日頃から備えるべきこと
いつ起きるかわからない津波を伴う地震に対して、津波発生が予想される地域に居住される方や通勤・通学されている方は、まず自分がいる地域の確認を始めましょう。近所に津波避難場所や津波避難ビルはあるか、またハザードマップで浸水範囲の確認をしましょう。ハザードマップは市区町村のHPから入手出来ます。東日本大震災の時には、ハザードマップ上では浸水しないとされていた地域も多くの津波被害を受けました。あくまでもハザードマップは想定される目安ということを意識して、その範囲に捉われることのないようにして下さい。
そして近くに津波避難場所がある場合は、そこまでの避難経路の確認も行いましょう。実際に歩いてみることで、地震発生時には通行不可能になる場所の確認も出来ます。もし津波避難場所がない場合は、頑丈な8階以上あるオフィスビルを捜しておきましょう。イザという時に逃げ込む場所の目安をつけておくことは大切です。
東北には昔から「津波てんでんこ」という言葉があります。これは「津波が来たらてんでんばらばらに一人で高台へ逃げろ」という意味です。家族全員がこれを徹底していれば、家族の身を心配して家に戻り津波に巻き込まれるという悲劇は防ぐことが出来ます。そして普段からどこに逃げるかも話し合っておきましょう。ただ大勢の避難者がいるので、例えば○○中学校にある△△像の前等、具体的に決めておくことも大切です。
政府広報オンライン http://www.gov-online.go.jp/useful/article/201302/3.html

日本は地震国です。現在発生が予測されている数々の地震は、将来必ず発生します。津波の危険性がある地域の方は「地震→津波発生→高台への避難」を常に意識して、命を守る行動を心掛けて下さい。

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