鬼界カルデラについて


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神戸大学と海洋研究開発機構などのチームが、鹿児島県沖の海底火山「鬼界カルデラ」の中央部に、巨大な溶岩ドームがあるのを確認したと発表しました。鬼界カルデラは約7300年前に巨大噴火が起き、火砕流が九州南部を広く覆ったと言われていますが、ドームの溶岩はその後に噴出したもので、今も活動的な状態が続いているといわれ、英科学雑誌「サイエンティフィック・リポーツ」に掲載されました。
今回は改めてこの鬼界カルデラについて書きたいと思います。

1.カルデラとは
「カルデラ」という言葉は、スペイン語の「大釡」という言葉に由来し、火山活動で生じた大きな凹地のことを表し、日本ではその直径が2km以上の大きさのものを「カルデラ」と呼んでいます。大型カルデラは、大量のマグマが一度に噴出したことで地下のマグマ溜りに空洞が生じ、そのためにマグマ溜りの天井部分が崩壊して、直上の地表部分が大規模に陥没するために形成されます。
巨大カルデラを形成する「超巨大噴火」は、数万年から数十万年といったきわめて長い間隔をおいて噴火を繰り返します。アメリカのイエローストーン火山、ニュージーランドのタウポ火山地域、インドネシアのトバ火山など、地球には超大型のカルデラが存在します。
そして日本列島では、北海道の摩周カルデラ、屈斜路カルデラ、支笏カルデラ、洞爺カルデラ、東北の十和田カルデラ、そして九州地域の阿蘇カルデラ、姶良カルデラ、阿多カルデラ、鬼界カルデラと、日本列島の北と南にカルデラが存在しています。
巨大なカルデラが存在するということは、はるか大昔に、そこから数百万立方キロにも及ぶ大量のマグマが噴出して地下空洞が出来たことを意味しており、過去12万年の間に、琵琶湖1.5杯分ものマグマを一気に噴き出した巨大カルデラ噴火が少なくとも10回は発生したことが確認されています。

2.最後の噴火
何回かあったカルデラ噴火のうち、鬼界カルデラは最も直近の7300年前に噴火しました。このカルデラは九州最南端、大隅半島佐多岬のさらに南西50キロに位置している25×15キロの規模の海底カルデラで、最深部は水深500mにも達しています。現在この海域には薩摩硫黄島、新硫黄島、竹島がありますが、ほぼ東西に並んだこれらの火山島は鬼界カルデラの北縁にあたり、カルデラの北縁がかろうじて海面に顔を出している部分です。
7300年前の噴火によって発生した火砕流は、海を渡って50キロ先の鹿児島県南部を埋め尽くしました。火災流は高温の火山ガスと混合一体化しているため地面との摩擦が少なく、100km/時を超えるスピードで一気に遠くまで流れます。ガス成分が多い場合は比重が小さいため、海面上を火砕流が滑走することもあります。この時の噴火では、9500年も前から始まっていた独自に発達した日本最古の縄文定住集落が、火砕流により壊滅してしまいました。また海中に突入した火砕流の一部は大津波を発生させ、その痕跡は長崎県島原半島で確認出来ます。
この噴火で降り積もった火山灰は濃いオレンジ色が特徴の「アカホヤ火山灰」と呼ばれ、南九州では50cmを超える厚さの火山灰で覆われました。そして四国や紀伊半島は厚さ20cmを超える灰白色の火山灰で一面を覆われ、遠く離れた関東地方にも10cm程度の火山灰を降らせました。西日本の森林は枯れ果て、食料の大半を森林に頼っていた西日本の縄文人は飢餓に陥り、その上、有毒な火山灰による呼吸器障害に見舞われ、数週間のうちに多くが死滅しました。そして鬼界カルデラの超巨大噴火後、南九州では900年あまりもの間、豊かな照葉樹林の森は復活せず、人が住めない無人の地となっていたようです。

3.現在の鬼界カルデラ
先月、草津白根山の噴火がありましたが、このような「山体噴火」に対して「カルデラ噴火」は噴火の間隔が非常に長く、前回噴火したのが何万年も前になるため、地質を調べることにより噴火の痕跡がわかるというものです。そのため噴火の確率も1万年に1回となり、もし噴火が発生したら1億人近くが命を落とすと言われても、ピンと来ないのが現実です。火山学者も巨大カルデラの存在はわかっていましたが、あまり研究されてはいませんでした。しかし、2002年に石黒耀・著『死都日本』という小説が出版されてから、カルデラ噴火が注目されるようになり、その研究が開始されました。
2016年10月に神戸大学と海洋研究開発機構などのチームは、鬼界カルデラ内でドーム状に盛り上がっている場所を調べました。音響測深装置で水深約200~300mの海底に向けて船から音波を出し、反射波を観測。その結果、少なくとも5ヶ所で熱く濁った水が海底から湧き出る「熱水プルーム」が確認されました。海底からの高さは最大で約100mに上ります。

2017年3月の第2回調査では、カルデラ内の海底にある直径約10キロ、高さ約600mに及ぶ巨大な溶岩ドームの存在が明らかになりました。体積は320億立方メートル以上で、琵琶湖の水量275億立方メートルをも上回ります。水中ロボットによる調査で、溶岩が急速に冷えて固まった際にできる割れ目が多数あることや、ガスの湧き出しを確認し、未解明だったドームの性質が裏付けられました。
ドームを作る溶岩の量は桜島の2倍以上。岩石を採取して解析した結果、その成分は7300年前の噴出物とは違い、比較的新しいとみられています。その表面では火山ガスや熱水が湧き出ており、チーム代表の巽好幸・神戸大教授は「活動度が高いのは明らか。地下に巨大なマグマだまりが残っている可能性がある」と語っています。
          
サイエンティフィック・リポーツ
Giant rhyolite lava dome formation after 7.3 ka supereruption at Kikai caldera, SW Japan
  http://www.nature.com/articles/s41598-018-21066-w

4.もし巨大カルデラ噴火が起きたら
巨大カルデラ噴火は、途轍もないマグマが一気に噴出します。カルデラは北海道と九州に集中していますが、日本列島全体に大きな影響を及ぼすのは九州にあるカルデラが噴火した場合です。火山灰が偏西風で東へ運ばれ、日本列島全体を覆う可能性があるからです。
まず最初のプリニー式噴火によって、九州中部では場所によっては数メートルもの軽石が降り積もって壊滅的な状況に陥ります。そしてクライマックス噴火が始まると巨大な噴煙柱が崩落して火砕流が発生し、全方位へと広がって行きます。数百℃以上の高温の火砕流は全てのものを呑み込み、そして焼き尽くし、発生後2時間以内に700万人の人々が暮らす領域を覆い尽くしてしまいます。
九州が焼き尽くされた後、中国・四国一帯では大量の火山灰が降り注ぎます。そして降灰域はどんどん東へ広がり、噴火開始の翌日には近畿地方へ達します。大阪では火山灰の厚さは50cmを超え、木造家屋の半数近くは倒壊します。その後、首都圏でも20cm、青森でも10cmもの火山灰が積もり、北海道東部と沖縄を除く全国のライフラインは完全に停止します。
巨大カルデラ噴火の発生による直接的な被害者は、火砕流と降灰合わせて1000万人程度と考えられます。しかし水道は給水不能、発電も不可能、国内ほぼ全ての交通網はストップし、生活不能に陥った人達に対する救援・復旧活動も絶望的になります。救援活動が殆ど不可能な状態では、1億人以上が命を落とすこともあり得ます。

YAHOOニュース 巨大カルデラ噴火 神戸大学教授・巽 好幸
  https://news.yahoo.co.jp/byline/tatsumiyoshiyuki/20170511-00070808/


カルデラ噴火の前兆として、溶岩の流出を伴う噴火が起きた例も確認されていますが、その詳細は判明していません。前兆現象を長年研究してきた鹿児島大学名誉教授の小林哲夫氏(火山地質学)は、「前兆現象は、数百年前に起きることもあれば、1年前に起きることもある。何が引き金になって、どんなタイミングで噴火が起こるのか不明な点が多い。さらなる研究が必要だ」と話しています。
人間の感覚からすれば、数百年という年月でもとんでもなく長いものですが、地球の歴史から見ればほんの一瞬です。いつ起きてもおかしくないと言われ始めたカルデラ噴火に、私達が遭遇することがないことを祈ります。






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